その面接は「再現性」があるか? 採用戦略に必要な3要素
再現性の担保と迅速なアクションを起こす事ができるか?
良き経営者は、採用への対応を優先的に考える。求める人材が1人採用できることの効果はどれくらい大きいことかを知っているため、採用への時間と労力は惜しまない。そして、採用力を考えるとき、「再現性」「スピード」「運用」の3点を、常に押さえている。
まずひとつめ、「再現性」とは、採用の品質担保といえる。
採用基準が、面接官によってまちまちになっていないだろうか。なぜその候補者を選んだのか、言語化されないまま次の採用に向かっていないだろうか。もちろん、採用基準は、各社が決めることなので、役員個々人の判断が基準になるというやり方をとっても構わない。しかし、重要な局地戦の面接時の判断軸が、あまりにも面接官任せで、均一化されていない会社が驚くほどにある。
会社の成長におけるミドルステージ以降は、社員数も増え、ちょっとした人のズレが信頼関係の低下を起こしかねない。経験やスキルだけで採用をしていくと、風土とのミスマッチが起こってしまうこともある。
ノリや直感、または「とても素敵な人だから」といった判断軸は否定しない。ただし、人は自分に似た志向性や個性を好きになる傾向がある。自身の判断軸ではなく、会社に必要な人材の判断軸を明確に具現化し、再現性に繋げて欲しい。
「スピード」については、明確で早い判断や候補者への迅速な連絡、短期間での面接回転数といった、物理的な早さが一つ挙げられる。
しっかり面接回数を設けて多面的にみる方が異彩を発見できる場合も多いので、単純な期間の短さだけではない。むしろ重要なのは、社内でどれだけ判断軸がディスカッションされているか、共通認識が進んでいるかということが、仕組み化以上のスピードをつくっていく。
運用の精度が再現性の鍵になる
たとえば、求める人材像が共有できていないと、一次面接・二次面接では通った候補者が、最終面接で逆の評価をされてしまうことが起こり得る。評価点が食い違ったままだと、次の候補者をあげてきても同じことが起こってしまい、手戻りの時間が積み重なってしまう。
特に最近の傾向では、軸となるコンピテンシーや志向性を具言化できているものの、この共通言語が社員個人によって捉え方が異なるまま活用されている事が致命的なミスに繋がっている。
もうひとつのポイント、「運用」も含めてしっかり設計することができたら、視点を共通して持つべきところ、食い違っても構わないところを使い分けて質の高い採用プロセスを持つことができるようになる。
面接の回数を重ねる意味は、複数の眼でその候補者が自社にマッチしているか、見極めていくことにある。ベースとなるスキル面、カルチャーフィット面については、全階層で共通認識を持っていないと先のようなズレが起こってしまう。
ー方、想定するポジションでどんな活躍をしてくれそうか、将来的にみてどのような期待を持てるかなどは、複数の視点で異なる判断があるかもしれないが、健全な視点の違いは、質の高い採用のためにむしろ必要といえる。
「運用」については、常に検証をする必要がある。自社が求める人材が含まれていない母集団をいくら形成しても、いい採用にはつながらない。求める人材に近い母集団を形成する具現化の創意工夫はできているか。面談やリファラルなどを活用し、選考過程の前に質の高い候補者に絞り込むことができているか。労力はかかっても効果の薄い打ち手を続けることがないよう、考えていく必要がある。
そしてその運用は、入社までがゴールではない。活躍までがゴールである。これからの人事の方には、定着して成果を出すまでを運用の定義とし、誰しもが活躍する採用戦略を目指して欲しい。
こうした工夫を重ねつつも、採用に携わる人に最も欠かせないのは、採用にかける情熱である。以前、セミナーで講演いただいたサイバーエージェントの膽畑匡志氏は、「採用は、人事における一丁目一番地」と言っていた。まさに、採用は会社の成長の起点そのものである。そこにわくわくできる姿勢が、いい成果を引き寄せるはずである。