中途採用戦略立案 10のポイント

最終更新日:2020/06/28

Writing by:佐藤 薫

「戦略とは、戦いを略すること」 以前、人事のセミナーで、この言葉を耳にした時、「なるほど!」という妙な納得感がありました。その時気づいたのは、戦略とは、「どう戦うか」ではなく「どう戦わないか」だということ。「どう戦わないか」とは、決して「戦いを放棄する」ことではなく、「限られたリソースをどこに投入するのか」ということです。

中途採用戦略の目的は?

一番大きなインパクトが想定されうる部分にリソースを優先的に配分し、結果として勝利を収めることが「戦略」だとした時に、「中途採用戦略」における「勝利」とはなにか。それは、「事業成長」に他なりません。CANTERAの中でも、度々「経営に資する人事」の話がなされていますが、人事のコアバリューは、「人と組織を活かして事業を伸ばす」こと。

頭では分かっちゃいるけど、実際はそんなにうまくいかない。私自身、来る日も来る日も、失敗の連続でした。はじめて中途採用戦略づくりに着手した当時、一番困ったのが、「何を、どうやったら良いのか、わからない」ということです。それは、「作ったことがない料理を何も見ずに作れ」と言われているような感覚に近い。今振り返ってみると、その時に、ある程度、「どうやるのか」のレシピやアドバイスがあれば、もっと早く、人事のコアVALUEを体現できたのに、という悔しさがあります。ですので、今回は、今だから思う「中途採用戦略立案 10のポイント」と題して、自分なりの考えをシェアさせて頂ければ幸いです。

事業理解なくして採用成功なし。自社事業のリーンキャンバスを描いてみよう!

すでに、実施いただいている人事の皆様も多くいらっしゃるかとは思いますが、事業理解を深める上で「リーンキャンバス」は非常に有効なフレームワークです。もともとアメリカで生まれた、ビジネスモデル企画のためのツールで、日本でも新規事業の立ち上げなどで使われている手法ですが、なにも新規事業に限らずとも、自社事業を9つの要素から整理し、1枚のシートで俯瞰的に理解できるので、非常にわかりやすい。このフレームワークを使って、まずは、経営陣と同じレベルまで事業理解を深めていきましょう。

中計を読み解こう!

中計とは、中期経営計画のこと。企業が中期的に目指す、あるべき姿と現状とのギャップを埋めるための計画です。経営ビジョンを実現するために、3〜5年の中期でやっておくべきことを明確にしたもので、売上や利益目標といった定量的な数値が示されています。まずは、この中計をしっかり読み解き、3〜5年の中で会社がどこに向かおうとしているのかを深く理解する必要があります。

「あるべき姿と現状とのギャップを埋めるための計画」が中計だとしたら、その中の「ヒト」で解決できる部分を担うのが人事の役割となります。また、ここで、留意したい点として、「中計を盲目的に信じすぎない」ということがあります。計画は所詮計画。バイブルではないので、「前提から疑う」という視点も、これからの戦略人事には必要不可欠です。

「採用」と「今いる人の活用(育成)」とを分けて考える

事業成長の可否を握っているのは、なにも「採用」だけではありません。今、社内にいる人の活用(育成)。これも非常に重要な命題です。この二つを冷静に分けて考える必要があります。人事の役割として、「採用・育成・配置・評価・報酬・代謝」の6つがありますが、人事がこれら6つの機能を担う上で重要になるのが、「人事の一貫性」です。大企業などの大きな組織になればなるほど、人事部が機能別の縦割り組織になっていることが多いので、一貫性の担保は非常に難しいのですが、この「一貫性」があれば、「採用」と「今いる人の活躍」(広義の意味での育成・配置・評価・報酬)との役割分担もスムーズに行うことができます。

「採用」で担う部分の人物像について、ペルソナ設計する(こういう人が入社すれば、事業が成長する)

ペルソナ設計とは、もともとはマーケティング用語で、「製品やサービスを利用する顧客モデルとして作り上げる架空人物」のことですが、昨今「採用マーケティング」の重要性が叫ばれる中で、採用文脈でもこの「ペルソナ設計」という言葉はよく聞かれるようになりました。ペルソナ設計においては、「年齢、性別、趣味やライフスタイル、居住地や職業、年収など」を、まるで現実に存在する人物であるかのように設定します。ちなみに、ペルソナと人材要件は、似て非なるものですので、ご注意ください。なお、ペルソナ設計の設定において大事なポイントは、「一般的に優秀な人」を定義するのではなく、「自社にとって優秀な人」を定義することです。

ペルソナを元に人材要件を定義する

STEP④で、「ペルソナと人材要件は、似て非なるもの」とお伝えしましたが、ペルソナが、「一人のキャラクターを作り上げるように設定する」のに対し、そのキャラクターの人物像や、もっているスキルを端的に表した物が、人材要件となります。

人材要件は、
・条件をMUST/WANT/NEGATIVE
・求める人物像
で表現され、皆様が日々ご覧になっている【求人票】に記載されている内容になります。

ターゲットに刺さるメッセージを考える

ここからは、採用広報の領域になります。メッセージを設計する上で重要なのは、「何でもかんでも伝えようとしない」こと。ターゲットにとって必要な情報に絞って発信する必要があるのです。この際に、「一般的に求職者はどんな課題を抱えているのか」✕「自社のターゲットに提供できるベネフィット」で考えるとシンプルなメッセージ設計ができます。具体的には、下記の図のようになりますが、①働き方 ②仕事内容 ③人間関係は、どれも、「転職検討理由」の上位にくいこむ理由となりますので、そのフレームワークで「自社のターゲットに提供できるメリット」を整理するとよいでしょう。

誰をどこでとるのか決める

最近は、SNSを利用してのリクルーティングや、従来型のエージェントを使っての採用、自社HPなどのオウンドメディアを使っての採用まで、チャネルが幅広くあります。これだけチャネルが「乱立」していますので、自社にマッチするチャネルはどれなのか、それぞれのポジションごとにマッチするチャネルはどれなのかを、一つずつ戦略的に設定する必要があります。

採用フロー・ファネルごとのKPI設計

「採用」には、①Attract ②Judgeの二種類の役割がありますが、各選考フローにおいて、「誰が、どんな役割を果たすのか」を事前に決めておくことで、脱属人的な再現性の高い採用選考を実現することができます。この際、重要な観点として、「一度にあれもこれも見よう(判断しよう)と思わないこと」「一人で何役もこなそうとしないこと」が挙げられます。また、ファネルごとのKPI設計について、既にこれまでのデータがたっぷり蓄積されている企業においてはそれを一つの判断軸にするのも良いですし、ベンチャーなどで、一から戦略作りをする場合は、最初の頃は、データを集めることに集中し、一般的なデータを参考にしつつも、あまり気にしすぎない方が良いと個人的には思っています。

採用マテリアルの整備

ここでいう採用マテリアルとは「面接シート」や「採用ピッチ資料」などを指しており、これも採用フロー同様、誰が面接しても一定の基準を満たすための、再現性を担保する仕組みの一つとなります。「面接シート」は散らばりがちな候補者情報を一元で管理し、のちに振り返りもしやすいですし、「採用ピッチ資料」は、会社紹介・事業紹介、組織図・企業文化、求人情報といった「その企業のありのまま」を伝える一つのメディアです。採用ピッチ資料があれば、それを使うことで、誰でも一定レベルの会社説明を候補者に行うことができます。

面接官トレーニング

いかに採用マテリアルを整備したとしても、どうしても「面接官の質」にバラつきは出てしまうもの。そのバラつきを最小限におさめ、誰が面接官だったとしても、高いCandidate Experienceを担保し(Attract)、自社に必要な人物を見極める(Judge)ために、定期的な面接官トレーニングを実施するのも採用担当者の重要な仕事になります。

さて、ここまで駆け足で、「中途採用戦略立案 10のポイント」をご覧いただきましたが、いかがでしたでしょうか。おそらく、これだけでは不足があり、実際にはもっと多くのことを考えなくてはいけません。ただ、今回はあくまでも全体像を捉え、採用戦略を俯瞰で見て整理することを目的とし、このような形でまとめさせていただきました。これから初めて採用戦略を立てる皆様にとっては、考え方のフレームワークとしてご活用いただければ嬉しいですし、実際にこれに当てはめて採用戦略を考えてみてどうだったのか、の感想などもいただけると幸いです!

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執筆者

佐藤 薫

CANTERA ACADEMY4期卒業。

大学卒業後、大手アパレル企業→人材エージェント→外資物流企業→ITベンチャーを経て6月よりフリーランスに。BizDev出身で、人事にキャリアチェンジをし、人事歴としては4年ほど。「現場→人事」という異色のキャリアの私だからこそ伝えられる視点を活かして、「事業を伸ばす人事」実現のために奮闘中。

Twitter /noteでも「戦略/事業/人事…」について、あれこれアプトプットしていますので是非ご覧ください。

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