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採用後のオンボーディング設計

採用後のオンボーディング設計

特に中途入社者というと以前であれば「即戦力で当たり前」だったのが、意外と見込んでいた成果を出すまでに時間がかかることもあり、このオンボーディング施策が重要と言われている。

入社日は水曜日か木曜日

オンボーディング施策を考えるうえで入社日として適しているのは、どの日なのか。みなさん考えた事はあるだろうか?
企業における入社日の大半はこの2パターンではないだろうか。

(1)1のつく日(1日、11日、21日) 
(2)月曜日。

これについて、身内の人事担当者と話し合ったことがある。その時に出たベスト解は水曜日か木曜日だった。理由としては、まずは受け入れ側の問題。
月曜日は大抵1週間の始まりなので受け入れ準備を整えづらい・定例の営業会議がある会社も多く入社者を放ってしまいがちだ。

次に入社者側の問題。入社したばかりの週は覚えることも多く、緊張もしている。いきなり1週間フルに働くのではなく、比較的すぐに土日を迎えることが出来たら、頭も休められるしその週に教わった内容も復習もできる。更に、水曜日・木曜日の入社であれば「今週金曜日に歓迎会でもどう?」とすぐに調整ができる。

いかがだろう?これくらいオンボーディングの施策を考える際には「目配り・気配り・心配り」が必要という事を理解いただきたくて冒頭に事例として出させてもらった。

オンボーディングに必要な要素

改めてオンボーディングに必要な要素は何だろう。

企業文化・事業、インフラ準備、暗黙知、社内ネットワーク構築、スキル。これらをサポートしていくこと。プラスして、「自分を受け入れてくれてる」ウェルカム感を醸成することに尽きるだろう。
これらを各時系列(入社前、入社日、1週間、1か月)で仕組み化すれば良いと思う。

すべてを文章で詳細に書くのはナンセンスだと思うので、いくつかの要点と私が過去に参考にした事例を紹介したいと思う。

1) 企業文化:事前に企業文化が分かる冊子・映像を見てもらう。
入社後に経営者・役員から会社のビジョンについて語ってもらうのもいい。

2)インフラ準備:PC、デスク、携帯、IDカード、名刺、フォルダアクセス権限の準備
当たり前だが、最低限のインフラ準備は入社前に完了しておくこと。これが準備されてないと「自分は歓迎されてないのだろうか?」と入社者のテンションを下げることになる。ましてや面倒くさそうなところなど、決して見せてはいけない。

3)暗黙知:その会社ならではのルールに中途入社者は意外と悩まされる。
会議室の予約方法は?連絡手段は、内線?メール?チャット?必要な資料、規程類はどこに格納されているのか。この社内の暗黙のルールに躓く中途入社者は多い。

サイボウズにおいては、中途入社者自身が後進に向けて勉強会を行い、「対面とオンラインコミュニケーションの使い分け」「業務のやりとりに絵文字は使うか」「質問するときは公開スペースのほうがいいのか」こんなテーマについて話し合ったところ大好評だったそうだ。
https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m005402.html

細かいと思われるだろうか?私は、まさにオンボーディング施策を考える人事にはこれくらいきめ細やかな視点が必要だとわからせてくれる事例だと思っている。

4)社内ネットワークの構築:これも新卒入社者であれば、同期とのつながりや先輩との繋がりも作りやすいが、1人でポツンと部署配属される中途入社者にはこれもハードルとなってしまう。
これも意図的に、人事側で仕組み化する必要がある。

例えば、中途入社式を実施し中途入社同期のネットワークを作る。中途入社者と会社のキーマンを交えたランチ会。中途入社者の自己紹介を月一でポータルなどに掲載する。他にも社内人脈を作れるようなイベントに参加してもらうのが良いだろう。
また相談しやすい存在としてメンターを作るのが欠かせない。

5)スキル面のサポート
中途入社者にスキル面のサポートが必要なのか?と考える人もいるかもしれない。
だが、中途入社者といえど、自社の製品そのものに詳しいとは限らない。日本オラクルは中途入社者に向けて5週間に渡る研修を実施していることをご存知だろうか?

http://jhclub.jmam.co.jp/acv/magazine/content?content_id=10291


あの日本オラクルが5週間も研修しているのだ。ましてや、社内の教育体系やOJTの風土が整っていない会社こそ、最初に集中してスキル付与をするのが良いのではないだろうか。

6)ウェルカム感の醸成
最後に、入社者が受け入れられてると感じるウェルカム感を醸成することが大事である。
自己紹介をする場、上司・同僚からのウェルカムメッセージ、もしくは社長からのウェルカムメッセージがあっても良いかもしれない。

他にもオフィスツアーを行っても良いし、ウェルカムランチを初日から行うのは必須だ。

そこまでする必要がある?と思う危険性

ここまで読んでいただいて、どうだっただろうか?

「ここまでする必要ある?」「少し甘いんじゃない?」と思ったのであれば、オンボーディング施策を考える人事担当者としては、黄色信号と私は思う。

入社者は少なからず不安を感じている。「この会社で良かったのだろうか」と。いわゆるマリッジブルーともいえる状態の入社者もいるなかで少しでも「面倒」といった思いを人事担当者が持っていれば、必ず伝わってしまう。

「面倒」だと思う人事担当者の背景には「うちの会社に入社させてあげた」という慢心があるのではないだろうか?でも、想像したことがあるだろうか?もしかしたら、その入社者は待遇・条件を下げてまでやりがいを求めて自社に入社しているのかもしれない。将来得られるはずだった退職金を捨てて入社してきているのかもしれない。

オンボーディング施策を設計するのは、いくつかの要点を絞ればできる。一番大事なのは、人事担当者の目配り・気配り・心配り。何より「自社に入社させてあげた」などと絶対に思わない謙虚な姿勢があれば、上手く行くと思う。

Written by

AkikoKitamura
CANTERA ACADEMY5期卒業。 前職で、総合商社の通信領域のグループ会社にて人事を13年担当。 評価昇格制度、人材開発・組織開発が専門。 特に人材開発では、新入社員から部長選抜までの階層別教育や新規事業リーダーを輩出する選抜教育まで幅広く網羅。社内大学を設立。 厚生労働省グッドキャリアアワード・イノベーション賞を受賞。 個人として、キャリアコンサルタントの事業化プロジェクトに参画。現在は住宅系テック企業にて、人材開発・組織開発を担当。
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