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中小企業の人事担当者がなぜ今1on1をやるのか

中小企業の人事担当者がなぜ今1on1をやるのか

人事としてのポリシー

私は人事や組織を以下のように信じています。

人事とは未来の会社を作ることそのもの
・組織で最も重要な資産は人。会社は人が全て

今いる社員を育てるのも、新しいメンバーを迎えることもそれら全ては未来の会社のDNAとなり、未来の会社を作るのはまさにその人たちです。また、会社法上の人格である法人は言うまでもなく実体はなく、会社を形作るのは社員であり、彼らの考え、行動、実績がまたその会社を作っていく。最も重要な資産が人であるということは疑いもないように思います。何よりせっかく弊社に入社してくれたのですから、彼らにやりがいを感じてもらいながら、未来に希望を持ちながら働いてもらいたいと強く思っています。早速、会社の次の100年を作っていくために今取り組んでいる1on1について触れていきたいと思います。

なぜ1on1をやるのか

まず結論からですが、高い視座で見れば
長期的に成長していける、変化に強い会社を作るため
でしょう。最終目的は利益を上げ続けていくにあると思います。広く捉えれば株式会社であればどのような会社も目指している姿にはそう大きな違いはないでしょう。少し解像度を上げていきます。

長期的に成長していける、変化に強い会社とは?

社員が自律・自立して動ける
VUCAの時代を迎えた今、変化への対応力は喫緊の課題だと思います。最近でもコロナウイルスによって多くの会社がパラダイムシフトせざるを得ない環境となりましたが、今後も同様の事態が発生するでしょうし、発生率は増えていくと思います。
また、中小企業は限られたリソースでこの荒波を乗り越えていかなくてはなりません。しかし、そのたび具体的な乗り越え方を現場に指示していたのでは対応しきれない。マイクロマネジメントが定着すると途端に変化に弱くなります(マイクロマネジメントは非常時においては有効だと思います)。社員一人ひとりが事態を正確に把握し、自律・自立思考で対応できる状態を作る必要があります。

情報が滞りなく流れる
これは失敗を許容する文化を前提とします。性悪説的に失敗を過度に咎める会社であれば、必然社員も情報を隠したがるものです。状況の変化に合わせて、社員の状態(行動と感情)・お客様の動向・ボトルネックがどこにあるのかなど、様々な情報を正確に捉え次の打ち手を考えるためにも即時・正確に情報が流れるようにしなくてはいけません。

ビジョン・ミッションが共有できている
会社の羅針盤であるビジョンを共有できていると、不測の事態に対しビジョンという「第一原理」をもとに会社としてブレのない動きにつながります。またビジョン達成に向けて常に「どうしたら達成できるか」という会話が日常的に生まれる環境であれば、不測の事態にもこの第一原理を道標に、適切に対応することができるのではないでしょうか。

社員が仕事にやりがいを感じており、協働の意識がある
私が中でも重要だと感じていることは、社員がその会社で働いていて幸せを感じられているかどうかです。組織は人であり、その未来を作るのもまた人です。社員が常に満たされず「定着率が悪い」という問題を抱え続けるような状態では、退職リスクに策を労するばかりで、目線を先へ投げることはできません。社員がやりがいを感じられるためには、そこに心理的安全性が担保されている必要がありますし、会社・上司との信頼関係が築かれていることが求められるでしょう。また信頼関係が縦横に広がることで会社へのエンゲージメントが高まり、その結果互いに支え合う「チーム意識」が醸成されれば、一人で解決できないことも周囲の社員と共に解決していける強い組織ができると思っています。

これらを実現するには多面的なアプローチが必要ですが、その中で1on1も有効だと思います。このような理想を叶えるためになぜ1on1は有効なのでしょうか。

なぜ1on1が強い組織作りに有効なのか

1on1を実施することで
・コーチングを通じて社員の成長が期待できる
・会社と社員の相互理解と信頼関係を深めることができる
・社員の現状把握、動機付けを行うことができる

このような成果を期待することができます。では1on1によるこのような効果が、上記の目的を達成するのにどのように有効に機能するのかについて見ていきましょう。

社員が自律・自立して動ける
1on1を行う際に意識するべきことの一つに「コーチング」という概念があります。これは具体的なやり方を指示するティーチングとは違い、課題解決に向けてどのようなアクションを取ればいいか、社員自身が気づくことを目的とした、双方向のコミュニケーションを通じて行うアプローチです。課題に直面した際にその解決策を教えるのではなく、どうしたら解決できるのか社員に考えてもらう。最初はそう簡単に答えを見つけることはできないかもしれません。また出てきた答えもあなたの求めるレベルにないかもしれません。
ただこのように考える機会を作ることは社員の成長につながりますし、考え方を身につけることができれば、社員自身で問題を解決できる体質を作ることができるのではないでしょうか。

情報が滞りなく流れる
情報がスムーズに流れるようにするために、その前提としてどんな情報を流しても自身の尊厳や自己肯定感を否定されないと言う安心感、心理的安全性が求められると思います。組織・上司と社員の間に信頼関係が築かれていることが重要です。1on1の場で互いの信頼関係を築くアプローチを取ることができれば、オープンな関係性の中で情報の流動性を高めることができるようになります。

ビジョン・ミッションが共有できている
1on1を実施する際、何らかの判断を社員と共にする機会があります。この時に判断軸となるのが、企業の羅針盤であるビジョン・ミッションです。迷った時の寄る辺となる一つの軸を基準にした会話を面談時に意識することで、少しずつ社員の思考回路にそれらがインプットされていくことが期待できます。

社員が仕事にやりがいを感じており、協働の意識がある
CANTERAの講義で印象に残っているスライドの一つにこのようなものがあります。

やる気とは「外発要因」「内発要因」により動機付けられ、それぞれ「働きやすさ」「働きがい」とも言える、といった内容です。仕事そのものを楽しんだり、成長を求めたり、達成を目指すという「やりがい」を社員に感じてもらうには、心理的安全性を担保し、会社と社員間の信頼関係が構築されていることが必要です。1on1の機会は相互理解を深め、メンバーへのフィードバックを通じて双方向のコミュニケーションが期待できる、また社員の成長や達成に向けて会社が支援できるといった点で、非常に有効な機会だと感じています。

このように、
・社員の自律・自立には、社員の現状に対する理解を深めた上でコーチングを通じて社員の成長をサポートしてあげる必要があること。
・情報が流れるようにするためには、相互信頼をベースとしたオープンな関係や文化を作る必要がること。
・ビジョンの浸透に向けて1on1の場は絶好の機会となること。
・社員がやりがいを感じるには心理的安全性の担保と信頼関係が築かれている必要があり、内発的動機に基づいた社員の成長を会社が支援するために1on1はその機会になること。

といったように、1on1はこれらに有効に働きかけられます。私も1on1を実施する際には、大目的としてこれらを意識することを忘れないようにしています。

次の記事では、
1on1を実施したことで社内にどのような変化が生じたのか

具体的な方法論とともに続けていきたいと思います。

Written by

Takahiro_Suzuki
CANTERA ACADEMY5期卒業。 新卒でメガバンクに入行し、法人営業に従事(3年弱@大阪)。退職後は亜欧米でのマーケットリサーチやプログラミング学習などを経て家業へ入社。中小企業である家業では現在取締役を務める。顧客対応や経理、人事 (採用/育成) を担当する傍ら、基幹システムのクラウド化、新規事業開発や組織改革などを進める。組織改革においては ”会社の最重要資産は人である” を信念に1on1の実施、評価制度構築など担当。社外では、全国にいる熱量の高い家業後継者”アトツギ”が集結する一般社団法人「ベンチャー型事業承継」に参加。 ベンチャー型事業承継はこちら(https://take-over.jp/)
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