CANTERA NOTE

1on1によりとある中小企業がどのように変化したのか

1on1によりとある中小企業がどのように変化したのか

雰囲気は悪く、不満で溢れていた社内

1on1を実施する前、弊社の状態はこのようなものでした。

・社員は自発的に動かず動くには指示が必要
・口をひらけば不満で溢れてしまう社内
・未来のことを話す社員はゼロ
・指示を出しても現場に上手く伝わらない
・社員は皆自分のことで精一杯

みなさんの会社はいかがでしょう。どこか似たような景色を見たことはありましたでしょうか。このような状態を見て、「全部社員らが悪い」と断ずることは簡単です。でも果たして彼らは入社当時からそのような状態だったのでしょうか。入ったばかりの頃はやる気と目標を持って取り組んできたけれど、そのような状態になってしまう環境や原因が会社にあったのではないでしょうか。

例えばマイクロマネジメント。緊急事態宣言発令時のような緊急時のマネジメント手法としては有効かもしれませんが、何をどうやるのかと言う、まるでロボットに信号を出すように、一挙手一投足の指示を日常的にし続けていると、社員はその指示を待つようになり思考停止状態に陥ります。なにせ指示以外の行動が認められない、では待とう、となるわけです。弊社もそれに近い状態になっていたと思います。

また現場社員から見れば「経営層は現場が意見を言っても何も聞かない」「そもそも意見を言う場も少ない」「指示がコロコロ変わりどこを目指しているのかがわからない」と言う不満を抱えていました。上意下達の組織構造においてコミュニケーションが常に一方通行ではそうなってしまうものでしょうし、日常的に不満を抱えていれば誰も会社の未来を語るような人はいませんでした。この時社内の雰囲気は非常に悪く、居心地の悪い空気が社内に充満していたことをよく覚えています。

1on1の有意性を知ったのが今年の初め。すぐに実施し始めて、5ヶ月ほど経過しましたが、嬉しいことにここ最近少しずつではありますが社内に変化の兆しが見えています。

・お客様から何らか声が上がればすぐに連絡がある
・新商品アイデアについて意見が出る
・若手から仕事に前向きな発言が増える
・困ったことがあればすぐ連絡してくれる
・他の社員のサポートに動く社員が増えた
・主語が「私」ではなく「会社(もしくは部署)」の発言をする社員が出てきた
・こうなったらこの会社ももっと大きくなるはず、という会社の未来に思いを馳せた会話が増えた
・面談の回数を重ねるごとに社員なりの答えを持つようになってきている

などなど。

もしかしたら「そんなこと、うちはもう普通にできてるよ」と言う会社も多いかもしれません。そうだとするときっとその会社は社内でとてもいい関係性を築けているのだと思います。弊社ではこのような前向きな雰囲気ができ始めていることは、良き変化として素直に喜ばしいことでした。これらすべてが1on1をやったからできたもの、と言うわけではないと思います。ただ、様々な取り組みの中で1on1を通じて行ったコミュニケーションがこのような変化の兆しを見せるのに有効に働いていることは間違い無いと思います。
ではどのように1on1を実施してきたのか、具体的な進め方について続けて書いていきたいと思います。

1on1の効果

1on1は魔法の手段ではありません。なので、ただやればいいというわけでもありません。私自身も失敗もしながら進めています。今の実施頻度はおよそ1ヶ月に1回ほどで頻度としてはこれくらいで今はちょうどいいと感じています。

1on1に期待する効果として

・課題解決に向けてコーチングを通じた育成
・会社と社員の相互理解と信頼関係を深める
・社員の現状把握、動機付け

このようなものがあると前の記事で列挙しました。これらの効果を実現するために、1on1をどのように実施しているのかについて紹介したいと思います。

1on1の進め方

大枠はこんな感じです。
1. 本題以外について話を振り、話してもらう
いきなり本題には入りません。これは雑談を通じてそれぞれの自己開示を行うことを目的にしています。話題は家族のこと、趣味の話なんでもいいと思います。この前は社員(男性)の彼女についてと私の家族についての話になりました。(当たり前ですが相手が嫌がる話題などセクハラ・モラハラにならないようお気をつけて!)自己開示を互いに行うことは「心理的安全性」を醸成することに一役買うこと、また互いに仕事以外の話をすることで会社では見えない魅力に気づく機会ができること(これ重要です!)、価値観について触れるいい機会になるなど様々な効果が期待できます。社員の業務外の現状把握と、信頼関係を深めることを目的としています。

2. 現状の課題について話をしてもらう
続いて仕事の話、社員の実績と社員抱える課題(悩み)についての話に入っていきます。こちらは、社員の業務上の現状把握と次の解決策考察につなげるためのステップです。ここではとにかく聞き役に徹します。社員が自身の現状についてどのように認識しているのか、どこに悩んでいるかについて話せるだけ話してもらいます。
私はよく「まとまってなくてもいいから思いついたまま話していいですよ」と伝えています。どんな話でも聞くつもりでいる、という意識を伝えるためです。また、実績に対する評価について、「会社はこう評価しているよ」と言うフィードバックとなぜその実績を生み出すことができたのか、分析も交えながら伝えるようにしています。
自らの行動が評価されていること、会社が見てくれていることの安心感から、自信を持って業務に当たることができるようになると思っています。また実績の棚卸しは再現性を高めることにつながると思います。

3. 課題に対する対策ついての話をする
課題や悩みとしてあげられた点について一つずつどうすれば解決できるかについて話していきます。この時、本人が解決策をすでに見つけていればそれを実現するためにどのような支援ができるかと言う話になります。もしまだ解決策を見つけられていなかった場合は、「どうすれば解決できると思うか」「この問題ってどこがネックになってると思うか」などの問いかけを通じて、答えそのものは社員に見つけてもらうようにします。
ここでコーチングが活きます。出てきた解決策については、よほど時間やお金がかかるものでない限り、まずはそれでやってみるように促しています。誰かに指示されたことより自分で思いついた方法をとることの方が学びは多いですし、自身の動機付けにもなります。そしてこの時だけは頻度高く1on1もしくは雑談を通じた現状把握と軌道修正を行い、取り組んでいることの微調整を行なっていきます。

4. 仕事を通じてどのような活躍をしていきたいか、キャリアについての話を聞く
この話題は毎回ではなく、必要に応じて、また話の流れも見ながらつなげていきます。目の前の仕事や悩みに対処することも大事ですが、長期的な目線に立って、彼らがどのようなキャリアを歩み、どのように成長していきたいのかについて話を聞くことは彼らの内的動機を知る機会ににありますし、できる限り会社はそのサポートをしていきたい。でもそもそもキャリアなんてことを考えたことがあまりないようで「わからない」という返事が多かったです。キャリアについて悩んでいる若手の営業がいた場合、ベテランの営業も交えてどのようにキャリアを積んでいったのか、経験値を共有する場も作ってみたりしています。

全ては性善説で捉える

以前このようにしていると話した時に、他社で幹部として働く友人から

・そこまでする必要ある?時間が取られるだけだよ
・そんな風に任せてたらどうせ適当にやられるのがオチ
・考えてもらう時間もまどろっこしいし、指示したほうが早い

と言われたことがあります。働く会社もポジションも違うので彼は彼なりの意見だったのだと思いますが、私からすれば「社員を信じずに何が上手くいくんだろう」というのが率直な感想でした。

世には性善説と性悪説があります。ざっくり言えば性善説は「信頼」をベースとした捉え方、性悪説は「不信感」をベースにした捉え方です。友人のアプローチは後者ですが、私は前者でありたいと思っています。
彼の意見に応えるならば、

・ここまでしないと会社と社員との信頼関係は築けない。
・任せて失敗して修正して、その先にある社員の成長ほど輝ける資産はない。
・すぐに指示を出してしまうことは社員の成長の機会を奪うことそのもの。社員の成長にコミットしないで次の時代を作ることはできない。

となるでしょう。社員の成長を願い、信頼関係を築き、彼らのやりがいを醸成する貴重な場として1on1はあると思います。自分のことをよくわかってくれ、話を聞いてくれて、助言や指導もしてくれる。そんなマネージャーには社員もきっとついて行こうと思ってくれるはず。私もそうありたいと思っています。

そうは言っても実施する本人にもスキルや経験が求められることもあり、なかなか苦戦しながら行っています。

次の記事では1on1を行う際の注意点や、実際に私がしてしまった失敗について触れていきたいと思います。

筆者の関連記事
中小企業の人事担当者がなぜ今1on1をやるのか

Written by

Takahiro_Suzuki
CANTERA ACADEMY5期卒業。 新卒でメガバンクに入行し、法人営業に従事(3年弱@大阪)。退職後は亜欧米でのマーケットリサーチやプログラミング学習などを経て家業へ入社。中小企業である家業では現在取締役を務める。顧客対応や経理、人事 (採用/育成) を担当する傍ら、基幹システムのクラウド化、新規事業開発や組織改革などを進める。組織改革においては ”会社の最重要資産は人である” を信念に1on1の実施、評価制度構築など担当。社外では、全国にいる熱量の高い家業後継者”アトツギ”が集結する一般社団法人「ベンチャー型事業承継」に参加。 ベンチャー型事業承継はこちら(https://take-over.jp/)
初心者でも安心。
現役人事が全面サポート

日本初のCHROアカデミー
「CANTERA(カンテラ)」
戦略人事を実現するための知識と
スキルを体系的に学べます。