CANTERA NOTE

採用は企業の最強の競争戦略

採用は企業の最強の競争戦略

4つのPとは

①Philosophy=理念・目的:組織のビジョン・目的に対する魅力
②Profession=仕事・事業:組織の活動に対する魅力
③People=人材・風土:メンバーと接する事で得られる魅力
④Privilege=特権・待遇:組織に属する事で得られる処遇や特権

マイケル・E・ポーターは「競争において、競合他社に対して優位に立つにはいくつかコア・コンピタンスを育てなければならない。」と言っていますが、その中でも最も再現性のないのが人材でした。

人事の役割としては、この「人材」を「人財」に、そして再現性を持った人事戦略を実行していくことが求められています。

そんな、経営戦略の大きな担い手である「採用戦略」についてどのようにお考えでしょうか?

自社のミッション・ビジョン・バリューに合う人材を市場からどのように自社を選んでもらい、入社し活躍してもらうことが出来るでしょうか?

多くの有名企業Google,Amazon,Facebook,Apple,Microsoftは非常に優れた採用戦略を打ち出していますが、そういった企業とどのように差別化し優秀な人材を採用していけるでしょうか?

採用担当のあなたの使命は?

さて、突然ですが、今まで別の管理部門にいたあなたが新しく採用担当者として、人事部へ配属されることになりました。その初日、配属先の上司に「人事にきた採用担当であるあなたの使命はなんだと思いますか?」

と、突然質問されました。

あなたはなんと答えるでしょう?

採用担当者だから、「計画通りの人数を採用すること?」それとも「自社に合った人を採用すること?」、「または、計画通りの採用をするために、採用市場に対して広くアピールして学生からの認知度を高めること?」でしょうか?

その答えを考えるときには、「社長になったら?」と考えてみてください。

「会社に新入社員を入れることは、社員に活躍してもらい業績を上げ、未来の会社の価値を高めること」になりますよね。

そう、採用担当者であるあなたの使命も「優秀な社員に入ってもらい、活躍し、業績を上げ、企業の価値を高め、社会に貢献する会社を作ること」となるのです。

採用担当だからと言って「計画通りの採用人数を採用すれば終わり」ではないのです。この視点を忘れずに、自社で活躍してくれる優秀な人財を採用するにはなにが必要でしょうか?リクルートワークス研究所が発行した「戦略的採用論」をベースに考えていきましょう。

人事の中でも高まる採用に関する課題意識

採用は、どこの企業にとっても、最も大きな問題であると認識されています。上場企業の89%は新卒採用力強化を人事課題に上げていることが調査結果からも明らかになりました。(人材マネジメント調査2015)その対策として、採用プロセスの再構築に注目が集まっており、どの企業も欲しがる人材ではなく、自分たちの企業にフィットする人材をどのように抽出・設定するのか、その人材をどのようなプロセスで探し出し、どのようにアセスメントするのか。そして、入社後に活躍する人材を人事ビッグデータからどう特定して、求める人物像を構築するか、といった採用プロセスのイノベーションにも注目が集まっています。

しかしながら、旧態依然の新卒採用を続けている企業は、新卒採用自体が大規模な欠員補充になっているといわれ、さらに、中途採用の70%は欠員補充だという実態もあります(中途採用実態調査2015「リクルートワークス研究所」)その採用をめぐる視点の偏りや欠損、そしてそれがもたらしている現状の不全感を打破するために、「戦略的採用」という論点の提示により、企業の競争優位性を高め、中長期戦略と短期戦略を同時に達成するための人的資本調達を既存の人材マネジメントシステムとどのようにリンクして実現していけばいいのか?を「戦略的採用」のフレームワークを用いて解説しています。

うまくいく採用設計とは?

さて、中途採用がうまくいっている企業の特徴はなんでしょう?こちらも調査によると採用チーム内で人材要件のすり合わせを十分に行うと採用選抜の効果が高まることがわかりました。基準となる人材要件を納得いくまで議論、すり合わせした上で、求職者が自社の文化・風土と合うかどうかを重視して先行することに中途採用の成否がかかっていました。そして、中途採用がうまくいっている企業とそうでない企業を比べたときには、より多くの情報源を活用して人材要件を設計していることが明らかになっています。

例えば、①事業部長からのヒアリング、②経営者の考える自社のビジョン、③長期的な育成方針、④育成方針の伝統を踏まえて中途採用の人材要件を設計していた。などを人事が実行していたのです。つまり、事業部長からのヒアリングと経営者の考える自社のビジョンを踏まえ、戦略との調整を行い、採用後の育成方針を考慮することで社内の人事諸制度との調整を行なっている。これが、中途採用がうまくいっている要因だったのです。経営と現場が思い描くそれぞれのビジョンと採用後の育成方針を踏まえて人材要件を設計し、明確化された人材要件を採用チーム内でしっかりと共有・理解することが、「戦略的採用」の成功の鍵となる可能性が示唆されています。

戦略的採用のパースペクティブ

人材採用には、欠員補充や、新規事業のための人員強化、次世代経営者の確保など、様々な目的があります。上記のように中途採用を実施する理由としては欠員補充が70%を占めていますが、かたや、将来の経営幹部候補を確保するための新卒採用は5%以下という結果です。

経営上、とりわけ重要なのは、組織の競争優位を強化していくための人材採用であり、それが「戦略的採用」であり、以下の3つの条件を満たすものだと定義しています。

  1. 組織の競争優位の源泉となる人材の採用である
  2. そのような人材を獲得するための方法が意図的にデザインされている
  3. 状況に応じてダイナミックに採用を変えていく

つまり、「戦略的採用」とは、経営・事業戦略を実現するための人材採用であり、その採用を実現するために募集や選抜の方法が作り込まれていること。さらに、採用の結果や外部環境の変化を受けて、動的に採用を進化させる一連の活動であること。そのためには次の5つの展望(パースペクティ)が必要になります。

  1. 募集・選抜のプロセスマネジメント
  2. 戦略と採用の一貫性
  3. 多様な関係者のコーディネーション
  4. 採用と内部制度の整合性
  5. 成果を次に反映するフィードバックループ

競争優位を強化するための採用は企業が人材採用によって競争優位を獲得するには、「戦略と採用の一貫性」が重要なのはいうまでもありません。さらに、競争優位を創り出す「採用」には攻める採用と守る採用に分けられるのです。

「攻めの採用」と「守りの採用」

「攻めの採用」とは、競争優位を強化する採用
・事業変革のための経験者採用
・経営戦略と連動した新卒採用
・事業拡大のための大規模非正規採用
・グローバル化のための外国人採用

「守りの採用」とは、組織構成を維持する採用
・欠員補充の経験者採用
・ルーティン化した新卒採用
・補助業務の個別の非正規採用
・人材不足対策としての外国人採用

「自社の採用戦略はどちらの人材を必要とし、採用しようとしているのか?」を定義するところから始めないといけません。

採用の変革には採用以外の変革が必要

人材採用や外部人材の活用などの人材調達は、報酬制度や能力開発などと並ぶ、人材マネジメント(HRM)システムを構成する要素の一つであり、それぞれが独立して存在しているのではなく、相互に補完・依存関係にあります。そのため、採用や、能力開発といった、HRMシステムのある内部制度を変革しようとすると、芋づる式に、他の内部制度も変えなければならなくなるのです。そのため変革を起こすのは非常に難しく、採用においても募集・選抜だけでなく、配属先や入社後教育、雇用期間と連動しているため、何かを変えようとするならば抜本的に見直しが必要となるのです。

そんなときには、戦略的採用のホイールを駆動することで解決

現場に起こる最前線の変化の兆しを採用活動に反映するホイールモデルは、「成果を次に反映するフィードバックループ」です。人材獲得をめぐる競争が厳しくなっている中で、従来通りの採用を続けていると、どこかで思うような成果があがらない事態に直面します。

採用の最前線で感じる外部環境の変化の兆しを受け、「募集・選抜のプロセスマネジメント」を改善し、「関係者のコーディネーション」を強化し、時にはさらに「採用と内部制度の整合性」にまで踏み込んだ改革を行い、「戦略と一貫性のある採用」を実現していくことが必要です。採用のPDCAは本来、募集・選抜プロセスの各工程だけでなく、もっと広い範囲で行う必要がありますが、外部環境との相互作用を前提とした、このようなダイナミックな採用行動をあらわす「戦略的採用のホイール・モデル」によって、企業と部署、そして個人の3階層構造により課題を明確にし、実行を階層ごとにフィードバックしながら戦略的採用を実現していけるのです。

「慣性」を断ち切り採用を変革せよ!

回り始めたホイールが簡単に止まらないように、多様な要素からなる複雑さと、高頻度性、定期性をあわせ持つ採用活動は、ひとたび合理性を持つと、それが「慣性」となり、同じ形で続けていくのが最も自然な形となっていきます。だからこそ、採用を変革するのは難しいと言えるのです。

思うように採用成果が上がらないという事態に直面した時には、ホイール・モデルに照らし合わせて現状を分析してみてください。あらためて何を「戦略的採用」とみなし、何を「戦略的採用」とみなさないか、まずはその線引きから着手していくことが必要です。

この研究結果においては、惰性的な慣性を断ち切り、新たな採用ホイールを回す。強力な駆動力が、採用ハブには強く求められているのです。「採用は単なるオペレーションではなく、多様な要素のアラインメントをとりながら、効率性を高めていく創造的な経営行為なのだ。」
とまとめられています。

是非、組織を通じて「戦略的採用」を作り上げる変革者として抜本的な組織改革へ乗り出してください。

Written by

mori_tomoya
CANTERA ACADEMY3期卒業。 大学卒業後、モバイルサイト広告営業を経て、生損保事業で独立。介護施設開発営業や介護運営コンサルティング事業を経験し、(株)フェニックスで事業統括責任者執行役員へ就任。29歳でグループ会社(株)ユニコーンを設立し代表取締役に就任、事業譲渡。2018年8月東証1部上場(株)ショーケース・ティービー(現ショーケース)へ入社。職業紹介事業・HR-Tech事業部の新規事業開発へ携わった後、経営企画本部へ異動し経営企画部長として経営管理・予実管理・情報システム・IR・PR広報を管掌し活動中。FFSパーソネルアナリスト1級。
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