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採用コミュニケーションで候補者との良い関係を構築

採用コミュニケーションで候補者との良い関係を構築

はじめに

採用広報の場面においてはこれらのコミュニケーションだけではなく、リアリティある信頼性の高い情報を届ける必要があります。そのために、採用プロセスに関わる全ての社員によるコミュニケーションの強化が必要不可欠です。
本稿では、採用広報は採用に関わる全ての社員がエバンジェリストであることの重要性と今日からすぐにでも実践できる考えや行動についてお話します。

情報発信で意識すべき「PESOモデル」

採用広報活動の基礎として、情報発信には「PESOモデル」の考えが大切です。
「PESOモデル」は情報発信メディアを、「ペイド(Paid Media(ペイド)」、「Earned Media(アーンド)」、「Shared Media(シェアド)」、「Owned Media(オウンド)」の4つに分ける考え方です。

「引用元*PESOモデル(by Gini Dietrich)参考/http://spinsucks.com/communication/pr-pros-must-embrace-the-」

Paid Media(ペイドメディア)

お金で買うことができる広告のことです。テレビやラジオ、新聞や雑誌などのマス広告、リスティング広告やバナー広告などのインターネット広告、採用でいえば「リクナビネクスト」や「エン転職」、「Indeed」のように広告費を支払い、掲載・運用するメディアを指します。

Owned Media(オウンドメディア)

自社のWebサイトやブログなどで情報発信をするメディアです。コーポレートサイトや採用サイト、採用ブログなどもオウンドメディアに該当します。採用ブランディングを目的としたオウンドメディアでは、「mercan」「FEATUReS」「フルスイング」が有名です。

Shared Media(シェアドメディア)

FacebookやTwitter、Instagram、Youtubeなどのソーシャルメディア(SNS)を指します。最近は企業アカウントによる情報発信よりも、企業担当の個人アカウントによる情報発信も盛んに行われています。

Earned Media(アーンドメディア)

ユーザーが情報の起点となるブログや口コミサイトなどのメディアを指します。「得る、受ける(earnd)」という意味があり、ユーザーからの信頼・評判を”受ける”という意味です。転職口コミサイトでは、「楽天みん就」「キャリコネ」「openwork」「転職会議」「カイシャの評判」などがあります。その他にも、SNS上に書き込まれた評判や口コミも概念的にはアーンドメディアに区分されます。
こうした社会や市場の声は、社内へのフィードバックにも非常に有用です。定期的にモニタリングしましょう。

「採用候補者視点」を意識した採用広報

ペイドメディアやオウンドメディア、シェアドメディアは施策が多くの企業が力を入れています。これらのメディアは、企業から社会への一方通行のコミュニケーションです。最も社会や市場の声や評価が反映されるのはアーンドメディアです。
アーンドメディアは、第三者の評価や口コミによるメディアですので、最もウィンザー効果による影響を受けやすいメディアです。ウィンザー効果とは、第三者による評価や口コミが間接的に情報伝達されることによって、より信憑性・信頼感が増すという心理効果のことです。第三者による客観的な評判や口コミが強力なエビデンスとなり、企業ブランドに影響するわけです。
評判や口コミをコントロールすることはできません。企業イメージは、企業が発信する情報を受けて、市場や社会が判断するものです。そのため、採用担当者は、採用に関する情報発信のみに力を入れるのではなく、採用候補者とのすべてのコミュニケーションにおいて最適な情報発信を心掛ける必要があります。さらに、採用担当者以外にも、面接などを担当する全ての社員の発言や行動も採用広報活動となります。採用候補者の接点を持つすべてのコミュニケーションが、企業イメージをつくりあげていきます。
採用担当者、面接官やリクルーターなどの社員とのダイレクトな対話機会によって、発信した情報が正しいものとして認識されます。
双方向のコミュニケーションにギャップがなく、その情報の信頼性・信憑性が高まる状態が、採用広報において極めて重要です。

採用活動は世の中に情報を出した瞬間から始まる

採用活動は世の中に情報を発信(採用広報)した瞬間から始まります。そして同時に、採用活動初期の認知段階から選考が終了するまでの一連の流れにおいて採用広報活動は続きます。
採用広報が必要とされる採用プロセスにおいて、採用担当者は、自身が採用広報を強く意識してコミュニケーションをとることが必要です。そのために実践すべきことをお伝えします。

採用候補者に伝えるべき正しい情報をインプット

正しい情報をわかりやすく伝えることは非常に重要です。そのためにも、正しい情報をインプットすることがより重要です。

1)企業情報を正しく理解・記載
募集原稿に書く企業情報は常に最新版にアップデートしていますか?事業内容、新規サービス概要、売上・利益・社員数等、正しい数字を記載していますか?アウトプットに必要な自社の情報を常に正しく把握しましょう。
2)仕事内容を正しく理解
募集する事業や職種、またその仕事内容を正しく理解しましょう。事業部の担当者の方々に協力を仰ぎながら、しっかり丁寧にヒアリングして理解を深めていきましょう。
3)最低限の労働法は理解して、正しい労働条件を理解
社労士や労務担当ではない限り、労働法(労働基準法や職業安定法、男女共同参画均等法など)は全て覚える必要はありませんが、募集原稿を作る上で最低限押さえておくべき労働法は覚えておくとよいでしょう。

正しい労働法の理解を怠り、誤解を招く恐れのある表記をすれば、採用候補者にとって不利益が発生します。企業としても、第三者から厳しい指摘を受けることもあります。企業ブランディングが棄損される恐れもありますので、労働法の理解は採用担当者の義務だと思って、頑張って勉強しましょう。その他にも、性別や国籍に関する表記は慎重に。

誰にでも理解できるように、わかりやすく情報を伝える

難しい専門用語を使いすぎていませんか?略語や社内用語を使ってはいませんか?採用候補者の経験や年齢は様々ですので、誰にでも理解できる情報を伝えることが大切です。
その会社のビジネスモデルや仕事の進め方、特定の職種の仕事内容など、前提知識がないと理解できない表現はなるべく控え、相手が中学生だと思って文章を作りましょう。その会社の担当者が当たり前だと思っていることが、読み手の当たり前とは限りません。先入観が抜けない場合は、自分以外の第三者に客観的に読んでもらってフィードバックを受けるようにしましょう。

思考を放棄せず、読み手の気持ちになって考える

採用広報における情報のインプットとアウトプットは、日々の業務で行うには非常に大変です。文章を考えたり書いたりすることが得意と言えるほどの方でない限り、つい後回しにしたり、過去の文章をそのまま流用したり、その活動自体をやめてしまう場合もあるかもしれません。たった一文に魂を込めたところで、その効果や成果が見えないため、忙殺される業務の中で本気度が上がらないのも、気持ちはわかります。
ですが、採用候補者は書かれた募集要項を一つひとつ丁寧に読み込み、応募資格があるかどうか、提出書類をどのように書くべきか、真剣に考えます。
採用広報の効果・成果は目には見えません。ですが、その情報は採用候補者に届き、その方の人生を左右するほどになる…そう思うと、とても重要です。採用プロセスにおいてこの段階は応募検討フェーズなので、提供する募集要項の情報はなおさら重要です。

採用にかかわる全員がエバンジェリスト

採用活動において、採用候補者と接点を持つのは人事・広報だけではありません。面接官やリクルーターなど、採用プロセスにおいて採用候補者と接点をもつ社員の存在が重要です。
1)選考中の採用担当者とのやりとり
メールや電話などの対応、返事のスピード感、適切な情報提供や不安の払拭、適切なスケジューリング…などなど、ストレスが無いようにスムーズなコミュニケーションが求められます。
就職や転職の口コミサイトなどを見ていても、採用選考中のこうした対応の不満というのは、企業イメージにも影響するようです。最適な対応を常に心がけましょう。
2)面接官とのやり取り
面接時の雰囲気や面接官の態度や受け答え、提供する情報や会話の内容などは採用広報上とても重要です。
面接は、はじめて現場で働く社員と話をする機会となります。採用候補者が、企業ホームページなどからインプットしてきた情報の真偽を確かめる場にもなります。そのため、あらかじめ発信した情報と面接官が伝える情報に相違があってはなりません。面接官は常に企業情報や募集内容などの最新情報を正しく理解し、伝えることができるようにしなければいけません。面接官が採用広報におけるエバンジェリストだという自覚を持ち、面接で適切な情報提供や企業の魅力付けを行いましょう。
3)社内の雰囲気
採用候補者は面接以外でも会社をよく見ています。社員同士の会話はあるのか、すれ違うときの社員の様子(挨拶など)、社内環境・美化、トイレやエレベーターでの会話の様子、など。些細なことですが、社内に採用候補者をお見かけしたら、素敵な笑顔で挨拶することを習慣化しましょう。

応募体験は企業イメージに関わる。毎日の採用活動が採用広報

冒頭に、情報の信頼性・信憑性は、ウィンザー効果によって、第三者からの間接的な評判が影響するとお伝えしました。さらに、採用候補者が情報収集する多様なメディアの中で、口コミサイトなどのアーンドメディアが重要になりつつあるともお伝えしました。
 
採用活動における採用候補者の応募体験は、最終的にはアーンドメディアにフィードバックされます。採用活動は、選考が終了したら終わりではありません。選考終了後、その応募体験が社会や市場にフィードバックされ、そこからまた新たな採用広報がはじまり、このサイクルが永遠と繰り返し続きます。
 
継続的に実施された採用広報活動が、その会社の企業ブランドを構築します。1年・2年でできあがるものではありません。過去から今へ、そして未来へ。一人ひとりの行動が、企業イメージをつくります。
 
採用候補者との良好な関係性構築はすぐには実現できないかもしれません。ですが、採用に関わる一人ひとりがその重要性を強く認識し、会社の魅力を伝えるエバンジェリストとしての自覚を持ち、採用候補者と丁寧に向き合い続けることが大切です。

Written by

Haruka_Andou
CANTERA ACADEMY1day卒業。 株式会社エイチーム 社長室 IR/PRグループ 広報担当。エイチームは、インターネットを軸に多様な事業領域にビジネスを展開する総合IT企業。前職の株式会社リクルートジョブスでの求人広告の企画営業を経て、2015年にエイチームへ人事として中途入社。エンジニアやデザイナー、ビジネス系職種など年間200名を採用。2018年に現部署へ異動し、人事広報として、オウンドメディアなどの採用広報、社内報などのインターナルコミュニケーション全般、その他社員エンゲージメントを高める施策を担当している。
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