CANTERA NOTE

人事にエニアグラム③心理的安全性を高めるためのグループ別傾向と対策

人事にエニアグラム③心理的安全性を高めるためのグループ別傾向と対策

ホーナイの三つ組み

自分から動く?相手を見ながら動く?相手から離れがち?

エニアグラムでは基本的に9つのタイプに分類しますが、この9つのタイプについて、精神科医のカレン・ホーナイが提唱した「ホーナイの三つ組」というグループ分類があります。

この分類によると、エニアグラムの9つのタイプは、3つのグループに分類されます。このグループは、エニアグラムの図において、それぞれ3角形で結ばれる関係性にあります。(各構成における要素についてはまた別の記事にてご紹介します)

①主張型:タイプ3,7,8・・・自分から動くタイプ

②追従型:タイプ1,2,6・・・相手を見ながら動くタイプ

③遊離型:タイプ4,5,9・・・相手から離れがちなタイプ

参考:エニアグラムのホーナイの3つ組を記載した図

参考:エニアグラムの基本図

それでは各グループについて考えてみましょう。

①主張型:自分から動くタイプ

主張型: タイプ3,7,8

・タイプ3 動機付ける人/成功を求める人/達成する人

・タイプ 7 万能選手/楽しさを求め計画する人

・タイプ 8 統率者/強さを求め自己を主張する人

これらのタイプの方に共通する傾向は、「主体的であり、自分から周囲の環境に対して直接的に影響力を発揮しようと行動する傾向」です。

リーダーポジションにおいては、一般的にイメージされる「積極的な判断と行動で、チームの行動の総量を増大させるような、引っ張るタイプのリーダーシップ」の傾向があります。

メンバーポジションにおいては、「自分の仕事で成果を出すなどして発言権を得たい/自分が主体的に行動できる立場を獲得したい」とバリバリ仕事をする傾向があります。

物事に対処するにあたって、人に頼るよりも、自分の力でなんとかしようとする傾向が強いです。ただし、自分の力でなんとかする、というのは、「自分が人に指示をする」という要素も含みます。主体的である反面、自己の考えに思考が集中しがちです。目的に集中しすぎると、暴走したり、他者に対する配慮を欠く場合などがあります。また、人に頼ることや弱みを見せることが苦手な人も多いです。

主張型においては、「自分の意見を表明すること」についての心理的なハードルが低いです。積極的な発言が得意な反面、他者の発信に対しては受容性が低くなるリスクがあります。会議などで他者の発言にかぶせて発言をする、他者の意図をしっかり理解せずに発言をする、といったケースが見られます。また、感情表現が豊かな人が多いため、その分「意欲的であること」と「感情的になること」のバランスに注意が必要です。「組織の運営において人間関係やマネジメント視点での他者活用が必要になる」と示し、他者との距離感や信頼関係に注意を払うよう促すことも重要になります。

では、このグループのタイプにとって、心理的安全性を向上させるためには、どのような対応をとるべきでしょうか。

積極的な発信には抵抗がないものの、実は彼らが隠し持っている「自分がやらなければならない」「自分が引っ張らなければ遂行できない」という強迫観念のようなプレッシャーを排除することは重要でしょう。組織の在り方やチームワークについて話し合い、「周囲に頼ってよい」「独断専行で仕事をしても、希望する評価を得ることはできない」「うまく行かなくても一人で責任を負わなくても良い」といったマインドを共有することが重要になります。周囲の発信を促し活動を支援する方向にエネルギーを向けることで、さらに成長できるでしょう。

②追従型:相手を見ながら動くタイプ

追従型:タイプ1,2,6

・タイプ1 改革する人/完全でありたい人

・タイプ2 人を助ける人/人の助けになりたい人

・タイプ 6 忠実な人/安全を求め慎重に行動する人

これらのタイプに共通する傾向は、「協力的であり、周囲の環境に対して自らの役割や責任を果たすことで、自分の存在価値と影響力を発揮しようと行動する傾向」です。

リーダーポジションにおいては、それぞれが役割を果たし、問題の解決や仕事のしやすさを向上させるような、支援するタイプのリーダーシップの傾向があります。

メンバーポジションにおいては、「他者の要求と自分の役割や責任・欲求を勘案して行動するバランス重視の考え方」で安定的に仕事をする傾向があります。

追従型はそれぞれのタイプで「自分の基準に照らして」「自分の居場所にとって」「相手が喜んでくれるか」によって判断に影響を受けやすい傾向があります。他者との関りや関係性が気になるグループで、相手との関係性に応じて行動をコントロールしようとします。自分と周囲の考えにギャップがある場合にストレスを抱えますが、相手に配慮した行動を重視するため、ジレンマに陥りがちです。本来必要だと思っても、「意見が通らない/受け入れられない」と判断すると、「黙秘」や、「迎合した行動」に陥るリスクがあります。最もイメージしやすいのが「NOのないイエスマンばかりの組織」ではないでしょうか。

では、このグループのタイプにとって、心理的安全性を向上させるためには、どのような対応をとるべきでしょうか。

まずは組織内での倫理基準や優先順位を明確にしなければなりません。そして「役割や責任のなかには、主体的な判断や発信が含まれること」について理解を促すことが必要になります。また、他者との関係性に不具合が起きていないか、確認と是正をすることが必要になります。

会社が明示した価値観と一致した経営/マネジメントをして見せることで、このグループのタイプは判断基準を受け入れ、その中で自分が貢献すべき役割を自覚し、素晴らしい貢献を果たしてくれるでしょう。

③遊離型:相手から離れがちなタイプ

遊離型: タイプ4,5,9

・タイプ4 芸術家/特別な存在であろうとする人/個性的な人

・タイプ 5 考える人/知識を得て観察する人/調べる人

・タイプ 9 調停者/調和と平和を願う人

これらのタイプに共通する傾向は、「周囲と関わることを避けて自分の世界に入りたいマイペース型」の傾向です。

リーダーポジションにおいては、「何でもかんでも関わることを是とせず、本質を押さえているかどうかが重要。お互いに細かく口出し/管理することを好まない、権限移譲タイプのリーダーシップの傾向」です。

メンバーポジションにおいては、「自分の感性・知識・調整力などタイプごとの強みを活かし、自分の価値を発揮する方向で行動する」というマイペースな傾向があります。

遊離型においては、自己の内面が脅かされることを嫌う(恐れる)ため、積極的に他者とコミュニケーションをとることを好みません。「自分は自分、他者は他者」という感覚が強く、愛想や迎合を嫌悪し、ありのままの自分で受け入れられることを望みます。そのためか、それぞれ「不愛想」「朴念仁」「不思議な人」などといった「変わった人」という印象を与えることもしばしばです。

「自分の意見を表明すること」についての心理的なハードルが非常に高く、前に出ることを好まず、できれば目立ちたくないという人も多いです。自分の意見を表明することに執着が無く、それゆえに自分の意見を強く押し通すことに魅力を感じません。事実や本質をベースに最小限の発言を行い、必要最低限の責任を果たしたと思えば、スッと身を引いて自分の世界に入ってしまいます。しかしながら、自分の得意分野(感性・知識・調整力)などが適切に運用される場合には、非常に実力を発揮する側面もあります。

では、このグループのタイプにとって、心理的安全性を向上させるためには、どのような対応をとるべきでしょうか。

彼らの発信を促すためには、「彼らにとって話す価値がある場づくり」が重要です。彼らが不得意な「積極的に関わること」を強制せず(なぜなら彼らにとって無意味な押し付けを強制されることになるから)、彼らの得意分野を引き出すために他者が積極的に発信をしやすい環境を整えることで、彼らは安心して周囲と関わることができるようになります。

まとめ

今回は、心理的安全性を向上させるために、タイプごとのグループに応じて想定する施策について書かせていただきました。

どの組織でも、同じタイプばかり集まっているわけではありません。主体的に活動するメンバーがいれば、縁の下の力持ちのメンバーもいることでしょう。下手をすれば、問題人物と目されているメンバーもいるかもしれません。

それぞれの強みや個性を活かして組織に参画するための場づくりをするならば「何をもって心理的安全性に対する納得感を持てるか」は非常に重要です。そしてここで「心理的安全性」を得るために必要な要素は、個々人のパーソナリティによって当然異なります。人事としても、制度の制定だけでなく個人的な対応が求められるため、非常に難しい部分ではないでしょうか。だからこそ、9つのタイプの存在と、各タイプが心で求める要素を把握するエニアグラムは非常に有用であると考えています。

エニアグラムを活用することで、社員それぞれが個性を活かして輝く職場が増えることに少しでも役立ちましたら幸甚です。

長文にお付き合いくださりありがとうございました。

ご興味がありましたら、こちらのサイトにWEB診断がありますので、ぜひご自分のタイプ診断をしてみてください。

日本エニアグラム学会 90問回答式チェック

https://www.enneagram.ne.jp/about/diagnosis/dns01

エニアグラム導入の注意点

エニアグラムを導入する際には、経営者・人事担当・部門長/マネージャーに注意が必要です。下記の内容について、エニアグラムの専門家に相談したうえで導入をされることをお勧めします。

①「タイプは本人が納得するまで決めつけない」・・・エニアグラムで最も重要なのは自己のタイプ認識ですが、このタイプを当初に誤認(ごにん)してしまうケースが非常に多いです。ワークショップに何十時間も参加していた人でも、気づいてタイプの認識を修正する場合が多々あります。ですから、最初に判定したタイプでも、本人が納得していなければタイプの要素を押し付けてしまわないように注意が必要です。「自分の内面の目を背けてきた部分」に目を向ける学びですので、慎重に対応する必要があります。

②「安心・安全の場を担保する」・・・エニアグラムのワークを行う場合、その中で話される内容はその場限りの情報として扱いましょう。ワークの中で過去に苦しんだ辛かった体験を話すのは、ワークの場のみにしてください。ワークの場を終了した後、業務中などにネタとして話すことは、研修としても職場としても、心理的安全性を破壊する行為になります。マネージャーのマネジメント能力向上にも、メンバーのパフォーマンス向上にも、百害あって一利なしですので、事前に参加者にしっかりと念を押すアナウンスをしておくことをご注意ください。

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Written by

Hiroshi_Sumikawa
CANTERA ACADEMY8期卒業。 EC系ベンチャー立ち上げ参画→リクルートキャリア→電子カルテベンダー営業所責任者等を経て、株式会社リソーシズを創業。医療業界で経営コンサルタントとして活動し、事務長として複数の医療機関で経営支援を行っている。 人事コンサルティングでは、主に人間関係トラブルやマネジメント問題に対応。性格類型分析のエニアグラム心理学をベースに経営層/メンバー間の認識ギャップや意思疎通の改善を行い、その後は中長期で組織が活性化するよう、人員体制見直しや管理・教育制度の支援を行っている。
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