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リファラル採用の活用による生産性の向上①

リファラル採用の活用による生産性の向上①

リファラル採用とは

リファラルとは英語で「委託、推薦、紹介」という意味。リファラル採用とは「社内外の信頼できる人脈を介した、紹介・推薦による採用活動」のことを指します。日本はリファラル採用を受け入れる素地が元々あります。俗にいう「縁故」。

縁故採用は面接などのプロセスを省略しますが、リファラル採用では面接をして採用の可否を決定しますので一般の採用フローとほぼ同様です。

リファラル採用では広告媒体や紹介会社の代わりに、社員がその機能を担うことになります。企業は自社で構築した人材データベースや社員の知人、SNSから自社が求める人材を探し出し、本人へ直接連絡をして採用します。広告媒体、紹介会社経由の「受け」の採用手法に対して「攻め」の採用手法と言えます。

リファラル採用の動向

米国の大企業では80%超がリファラル採用を活用していると言われています。活用企業の中で75%超がほとんどのポストに活用している状態とのことです。求人サイトに関しましては20%超となっています。

日本では転職者の約25%が「縁故」となっています。採用経路トップは広告の30%なっています。日本は「縁故」入社は実は多いということがわかります。そして労働者は知人に声をかけられることにさして抵抗はないと考えられます。

代表的なメリット(定量面)

リファラル採用では採用コストの削減に加え、複数のメリットがあります。

1.コストメリット
一般的な採用フローとリファラル採用フローで大きなコストの差が生じます。マイナビ社が2018年に調査した企業の年間中途採用コストの平均データでは、

・人材紹介経由:466.6万円
・求人広告:294.2万円
と、企業にとっては高いコストを採用に費やしています。そして約4割の企業のコストが増加傾向にあるとしています。20名から100名程の社員数の企業では求人広告経由では1名約80万円、人材紹介会社経由では新卒で50〜100万円、中途80〜140万円かかっています。

リファラル採用は1名あたりの採用額が約3〜15万円の間で抑えられるため、コストパフォーマンスは圧倒的に高いと言えます。内訳は経費や従業員への謝礼という少額の投資となっています。

1名あたりの採用コストに大きな差が生じることがわかります。

2.入社後の社員の定着率が向上
リファラル採用の前提である「嘘をつかない」ことによる入社後の定着率向上に寄与します。リファラル採用は社員が知人に紹介した際に嘘があったら信頼関係を壊すので「採用時の嘘」をつきにくい仕組みとなります。
また知人は会社の課題も理解して入社するので、入社後に判明した事実に落ち込むことや後悔のリスクがとても少なくなります。
そして双方不義理をすると知人の顔に泥を塗ることになるという心理も働くので、定着率向上に寄与しやすいのです。

代表的なメリット(定性面)

1.社長と会社に合う人材を採用できる
入社後の生産性でその他の採用経由で来た社員より高いと思われます。デメリットは同一化の懸念が考えられます。

2.会社の魅力と課題を見える化できる
リファラル採用は「社員が自社を知人に紹介したいと自発的に思う」「知人に転職したいと思ってもらえる」という前提が外せません。
そのために社員が自社に「強い魅力」を感じている必要があります。そして社員が「自社の魅力を見えている状態」が必要となります。加えて「会社の課題の見える化」をすることも重要です。
特定個人の約20年弱の会社員経験という主体的な基準で恐縮ですが、課題を見える化することを良しとしない経営者やマネージャーはとても多く、課題の見える化はリファラル採用を導入する為に超えねばならない障壁となると思います。
しかし障壁が高いからこそ超えた時のインパクトもまた大きくなります。

3.会社の魅力の継続的向上ができる(経営変革の実現)
会社の魅力を向上させるには2つの段階があります。

1)会社の課題を見える化する時
ハラスメントするなど社長や上司に対する課題があると、社員は知人に声をかけられなくなります(もしくは極めてかけにくい)。上層部の耳が痛い点をオープンにし、恒久的に発生させない仕組み化が前提となります。上記の繰り返しとなりますが課題の解決はとても難しく、そもそも社員が上層部のことを本心から敬意を表していなければリファラル採用プロジェクトは本来そこで終了です。

2)会社の魅力アピール時
会社の魅力として提示している内容が知人に評価されない場合は、その魅力を改良しなければなりません。上層部発案の魅力が知人に刺さらなければ、それは撤回もしくは修正する必要があるので、ここでも上層部の度量が問題となります。

4.幹部と社員が経営者目線を持てる(究極の人材育成)
魅力を知人など外部に伝える過程で、自社の制度を改良せねばならない事態も発生します。

・企業理念、行動指針

・欲しい人材像(あるべき人材像)

・経営課題

・中期経営計画の理解

・賃金、能力制度開発

これらの要素の改良作業を上層部だけでなく、社員も参加することで、社員の経営に対する知識やノウハウが増します。そもそも会社の内容や実情を詳しく知らなければ本来知人に説明もできません。社員が自身は社長の代行となっている、と考えるならば改良プロセスに彼らの参加は必須でしょうし、結果経営感覚が必要となりますので社員育成にも貢献します。

5.皆の心が一つになる
リファラル採用が続けば、社員全体の社長や会社への好感度が上がることになります。ただし社員の同一化による、諫言が発生しない文化となったり、発言ができない文化に先祖返りするリスクはあるので、そうならないよう「発言の自由」が担保された組織文化を維持する努力も必要と考えます。

次回はリファラル採用のデメリットやリスクについて述べてまいります。

参考資料:知らない人を採ってはいけない 新しい世界基準「リファラル採用」の教科書
白潟敏朗 著
株式会社KADOKAWA

Written by

Kamikawa
CANTERA ACADEMY6期卒業。 オートリース⇨人材紹介⇨イベント運営⇨人事周りへの商材を経験。ある方に「人事の仕組みを知らずに働くのは、ルールを知らずにスポーツをするに等しい」という話を聞きCANTERAに参加。CANTERANOTEの裏方として少しお手伝い。
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