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「New Normal?それともNo Normal?」

「New Normal?それともNo Normal?」

COVID-19がもたらした変化『私たちの暮らし』編

オリンピックイヤーとして、日本の社会と経済の転換点になるはずだった2020年は武漢での感染拡大のニュースから始まりました。

ダイヤモンドプリンセス号の時点では対岸の火事と思われていたことが遠い過去のようです。

政府の緊急事態宣言をきっかけに、外出自粛や県外移動の制限、そして何より『3密禁止』という人間の本能とも言える他者との触れ合いが制限されてしまいました。

飲食店、小売店、サービス業などフィジカルな接触を伴うビジネスは大打撃を受け、代わりにフードデリバリーや ECサイトが急拡大をしました。
クラウドファンディングで将来の予約券や店舗応援グッズを販売することで、コロナ禍の経営危機を乗り越えた店舗も注目を集めました。

多くの人々の趣味であり生きがいでもある旅行も自粛要請を受け、旅行/旅客/宿泊業界に大きなダメージをもたらしました。

巣篭もり需要の中で特筆すべきは、やはり『動画配信サービス』だったのではないでしょうか。

サブスク型の配信サービスはユーザー数が急拡大し、さまざまな動画コンテンツが消費されました。

番組制作ができないテレビ局は過去のドラマの再放送が流し続け、広告費が削減されたテレビからYouTubeに主戦場を移して活躍するタレントも多く出現しました。

鬼滅の刃が歴史的な大ヒットを記録しましたが、アニメ版がサブスクでほぼ無料で全話視聴できること、在宅時間の拡大によりその時間を捻出しやすかったこと、そしてコロナの影響で再認識した家族の絆の大切さなど、さまざまな要素が重なり合ったことによって起こった奇跡的なムーブメントではないかと感じます。

学校の授業も急速にオンライン化が進みましたが、その対応は学校によって大きな差が出ており、デジタルデバイドが浮き彫りになりました。

我が家にも高校生と中学生がおりますが、比較的早い段階からI Tの活用をしていた上の子が通う高校と、メール連絡網すら機能していなかった下の子が通う中学校ではその対応の差があまりにも大きく、自宅内で起きていた2人の間の格差はもはやコントのようでした。

このように、私たちの日常でもI T利活用度の格差が生活に大きな影響を与えることが浮き彫りになった1年でした。

COVID-19がもたらした変化『私たちの仕事』編

次に『私たちの仕事』に視点を移して、今年のトピックスを振り返ってみましょう。

・出社制限とリモートワークの状態化

・満員電車、痛勤からの脱出

・テレビ会議で存在感が消えたおじさまたちとWindows2000(窓際で年収2,000万)問題

・採用選考のオンライン化と地域格差(海外含む)の解消

・絶滅寸前の集合研修とオンライン学習への移行

・入社後ずっとテレワークが続く新入社員のオンボーディング問題

・出張、飲みニケーション、接待の消失

・ジョブ型雇用と副業の拡大

いずれも今さら説明不要だと思いますが、改めて振り返ってみると『昨年まで信じていた常識はいったい何だったんだ』と感じざるを得ない大きな変化の1年でした。

数年前に小池都知事が『東京の満員電車を無くす!』と言っていたのが昔話のようです。

と、ここまでは東京のI T企業で働く私の視点であり、メディアを通じて聞こえてくるトピックスでもあるのですが、これらは日本全国で起こっている事象なのでしょうか?

感染者が少ない地域、自動車通勤が一般的で食住隣接な地域、テレワークが行えない職種などでは、どのような変化が起きたのでしょうか?それとも起こっていないのでしょうか?

メディアの情報にも偏りがありますが、その情報を収集する個人の志向の影響も大きいため、自分の視点から感じることが世間の常識だと思ってしまうと大きな誤りを引き起こしてしまう気がします。

『人は自分の見たいものしか見えない』ということを肝に銘じて、ファクトフルネス的に、事実に目を向けていこうと強く感じております。

そして職場周辺に起こった変化の中で私自身が最も強く感じている違和感は「テレワーク」「Work from home」といった「手段」や、それによって引き起こされる「コミュニケーション問題」「どうやって人事評価するの問題」といったプロセスの方に注目が集まってしまい、「事業の成長と継続」という本質的なテーマに関する議論があまりにも少ないということです。

通勤や移動時間がなくなることによるQOLの向上や、フィジカルなコミュニケーションがなくなることによる諸問題は確かに起こっている事象なのですが、ビジネスが継続できなければ、そもそも雇用は維持できず、テレワークだとかオンライン飲み会だとか言っている場合ではなくなるはずなのです。

企業の廃業、倒産や大手企業の早期退職募集のニュースを対岸の火事だと思わず、この状況でいかに事業を継続/成長させるかという方向の議論を私たちから起こしていきましょう。

New Normal?それともNo Normal?

緊急事態宣言とともに「New Normal」という言葉がバズワードとして多用されたのもこの1年のハイライトであったと思います。

やっとワクチンが市場に出始めた2020年12月現在、まだ事態の収束は見えていませんが、私たちの常識の一部が塗り替えられたことは疑いようがありません。

今回は制御不能なウィルスがもたらしたネガティブな変化でしたが、これまでの歴史を振り返ると、産業革命、政治的改革、技術的革新、バブル/リーマンショックなど、常識が塗り替わる局面を私たちは何度も経験してきました。

その度に「New Normal」は生まれていたと思うのですが、新たなNormalに対応できず淘汰された産業/企業と、対応/適応し乗り越えた産業/企業があることは周知の事実です。

私自身の経験を振り返ると、1996年に大学に入学した当時はポケベル全盛期であり、携帯電話を持つ大学生はほとんどいませんでした。

インターネットはYahoo! japanが始まったばかりで、他のコンテンツはほとんどなく、Yahooのトップページが表示されるだけで「すげー」と言っていた時代です。

リクナビもまだ存在せず、企業一覧の分厚い冊子をめくりながら、ハガキで企業の応募書類を取り寄せしていました。
(人気企業では、この時点で大学/学部でフィルタリングされており、応募書類すらもらえないことがよくあるのが常識でした)

当時はNTTの営業窓口が各市町村にあり、インターネットはNTTの窓口で手続きをして、電話回線でつなぐものでした。

その後、街中に小さいケータイ屋さんが乱立して0円ケータイがばらまかれ、気づいたら大学生どころか中高校生までケータイを持つのが常識になっていました。

今となってはNTTの窓口も街中のケータイ屋さんも絶滅状態です。

大学2,3年生の時期を過ごした1997-98年には大手金融機関が立て続けに破綻し、就職超氷河期の到来とともに終身雇用はムリゲーであるということに気付かされました。

それから20年以上がたった2020年、トヨタをはじめとする大企業が「終身雇用はもう無理」と言い始めましたが、私たちの世代は、そんなことは20年前に気付いていました。

私が大学時代に所属していたサークルは、まもなく60周年を迎える歴史のあるクラブで、5年おきに周年記念パーティーとして数百人が集まっていますが、私と近い世代(40代前半)では、新卒入社した会社に今も勤続している人の割合は10人中2人程度です。

これが10年ほど上の世代の先輩になると、半分以上の方が新卒で入社した会社もしくはその関連会社で働き続けています。

○○世代という表現はよく使われますが、どのようなNormalがある環境で育ったのかによってその価値観が大きく異なります。

「最近の若い者は」という言葉は古代エジプトのピラミッドの壁画にも書かれているそうですが、それを会話のネタにして笑うだけでは思考停止であり、その若者たちが10年後、20年後の社会のNormalをアップデートし続けたことで、人類は発展してきているのです。

昨年逝去された瀧本哲史氏は著書やインタビューで「改革やパラダイムシフトは世代交代によって起こる」という研究結果を紹介されています。
(「2020年6月30日にまたここで会おう(滝本哲史著/星海社)」は本当にお勧めです)

つまりは下の世代の常識がこれからの常識になる中で、これに対応しないまま年齢を重ねていくことこそがリスクであるのです。

今回のNew NormalはCOVID-19によって強制的にもたらされたものでしたが、これからの新しい時代に向けて会社/事業が生き残っていくためには今の常識を疑う「No Normal」のスタンスが必要なのかもしれません。

そして地域特性・業界特性・職種特性など多様な視点を捉えるという意味でも、自身のメガネを通して見えるNormalだけに囚われず、No Normalの視点が求められているのではないでしょうか。

Stay Homeとなる年末年始は、身の回りと頭を整理して、次のNormalについて考える時間にしてみるのはいかがでしょうか。

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Written by

Kounosuke_Hirayama
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