自分の思考が縛られていないか。経営において思考の柔軟性を維持するために必要なこと
米国バージニア大学のチームの研究によると、人間は引き算の「決断」が苦手で、足し算にこだわる傾向があるとのこと。自身の行動を振り返っても、何かを改善する施策を考えようとすると、新しい施策を追加(足し算)する傾向があり、何かを止める施策(引き算)は出てこないことが多い。
思考の枠組みは想像以上に縛られている
日本経済新聞5月9日朝刊にこんな記事があった。タイトルは「現代人は「引き算」が苦手 労働や環境問題、解けぬ一因」。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC069WL0W1A500C2000000/
前述の米国バージニア大学のチームの研究である“人間は引き算の「決断」が苦手で、足し算にこだわる傾向”があることを紹介している。
私がハッとさせられたのは、この記事の冒頭にある「ベッドの4本ある脚のうち、3本が外れてしまった。ベッドが傾き、寝心地が悪い。さて、どうするか?」という問いだ。私はとっさに元に戻そうと3本の脚を付け直せばいいと考えた。「残った1本の脚も外す」という選択肢があるということが、すっかりと頭から抜けていたのだ。
これに似たような経験がある。オリエンテーリングという競技で、川を横切り目標に向かって最短距離を進んでいたチームを見つけたとき、自分のチームがいかに既存のルートに思考が縛られていたかを思い知ったのだ。
思考の枠組みを柔軟にするために
では、思考の枠組みを柔軟にするためには、どうしたらよいのだろうか。
まずは、思考の枠組みは固まりがちになるという前提に立つことが大事だろう。そのうえで、読書会や研修などで、同じものを読んだ・経験した人との意見交換が重要になる。人は同じものを見ても、感じ方はいろいろであり、他の人の感じ方を知ることで自身の思考の枠組みの幅が広がることを自分も経験している。
経営において思考の柔軟さを維持するには
思考の柔軟さや引き算思考は、他の人に意見をもらうことが大事だ。
私が所属する会社もこの1年で事業の柱を変えた。柱となっていた既存事業から撤退し、それまでサブ的な事業を柱に据えることにしたのだ。既存事業を止める決断をしたことは、引き算思考で決断できたことのように思う。中途半端に継続していたら、経営資源の配分が中途半端になり、うまく切り替えができなかったかもしれない。それ以上に売上が上がらないという現象に陥っていたかもしれない。
ここでの学びは、経営においても同じことが言えるだろう。新規事業を付加することばかりを意識するのではなく、撤退や中止など引き算思考でまずは考えてみることが必要なのかもしれない。
当社代表はよく外部の方に意見をもらう。事業計画を見ていただき、自分たちの考えや思考に対して意見をいただく中で修正している。これも非常に大事な姿勢だと思う。自分たちの思考が縛られているという前提に立った、適切な行動だ。私もそういう姿勢を意識していきたい。