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コンプライアンス(法令遵守)とは?パワハラとの関連性や事例も解説

コンプライアンス(法令遵守)とは?パワハラとの関連性や事例も解説

近年の企業経営で重要度の高い課題に「コンプライアンス」があります。従業員によるコンプライアンス違反が発覚すると企業に対する信頼度が失われてしまうため、人事担当者にとっても喫緊の課題といえるでしょう。

今回は、コンプライアンスの意味やパワハラとの関連性、そして実際に起こったコンプライアンス違反の事例を紹介します。

 

コンプライアンスとは何か

 

コンプライアンス(Compliance)とは、直訳すると「法令遵守」という意味で、今日では「企業コンプライアンス」を指すことがほとんどです。

「企業コンプライアンス」には単なる法令の遵守ではなく、社内ルールや世の中の倫理観、道徳観に従うことなども含むとするケースもあります。

企業がコンプライアンスに取り組むことは、社会や地域、消費者からの信頼を得ることにつながります。逆にコンプライアンスに違反すると、経営状態が悪化し、場合によっては倒産に結びつくこともあるのです。

 

コンプライアンスという言葉の使い方

コンプライアンスという言葉はさまざまなビジネスシーンで使われます。まず、社内でコンプライアンスという言葉を使う場合の例文を紹介します。

  • ・コンプライアンスを守ってもらうように部下に講習をする
  • ・社員のコンプライアンス教育はとても重要である

取引先や顧客など、社外で使うケースの例文は以下の通りです。

  • ・当社は、コンプライアンス重視の経営を行っている
  • ・当社は、コンプライアンス体制は整っている

コンプライアンスの意味と正しい使い方を理解し、従業員に対してコンプライアンスの重要性をしっかりと伝えましょう。

 

コンプライアンスとハラスメントの関連性

近年、コンプライアンスと同様に「ハラスメント」という言葉を耳にする機会も増えました。

ハラスメントの意味は「さまざまな場面での嫌がらせやいじめ」のこと。

ここで注意しなければならないのは、相手がハラスメントと感じたら、その行為はハラスメントと判断されてしまう、ということです。無意識の行動、言動がハラスメントと認定されるケースも少なくありません。

参考までに、職場で起こりうる主なハラスメントを紹介します。

 

パワーハラスメント(パワハラ)

パワーハラスメント(パワハラ)とは、同じ職場内で地位や立場を利用して、業務の適正範囲を超える精神的・身体的な苦痛を与えることです。2020年6月より、改正労働施策総合推進法(通称・パワハラ防止法)が施行されており、企業は職場内でのパワハラ防止のために必要な措置を講ずることが義務付けられました。ちなみに、取引先や顧客からのハラスメントは「カスタマーハラスメント」に分類されます。

 

セクシュアルハラスメント(セクハラ)

セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、「性的嫌がらせ」の意味で使われる言葉で、他者が嫌がっているにも関わらず、性的言動により不利益、不快感を与えることをいいます。被害者は女性とは限らず、男性が被害を受けるケースもあります。また、異性間だけでなく同性間でもセクハラは成立します。セクハラは、男女雇用機会均等法にてセクハラ防止措置が義務付けられています。

 

マタニティハラスメント(マタハラ)

妊娠や出産、育児に関しての嫌がらせや、妊娠・出産を理由とした解雇や雇い止めなど不当な扱いを受けることをマタニティハラスメント(マタハラ)といいます。マタハラは労働基準法などの法律で禁止されており、企業には防止措置が義務付けられています。男性社員が育休を取得するにあたり、職場から嫌がらせを受けることは「パタニテイハラスメント(パタハラ)」と呼びます。

コンプライアンスとハラスメントは混同されがちですが、全くの別物です。

ただし、強要や違反行為などを伴うパワーハラスメント(=パワハラ)はコンプライアンス違反とみなしても良いでしょう。

 

コンプライアンス違反事例

コンプライアンス違反が企業に与える影響として、社会的信頼の失墜、損害賠償・株主代表訴訟、行政からの処分などが挙げられます。

近年は企業のコンプライアンスに対する姿勢に世間の関心が高まっているため、コンプライアンス違反が発生したときには大きなダメージを受けてしまいます。企業イメージが落ちるだけでなく、最悪の場合は経営危機を招くことも。

ここで、実際に起こったコンプライアンス違反事例を紹介しますので、防止対策にお役立てください。

 

顧客情報の流出

顧客情報は企業にとって資産ともいえます。したがって、顧客情報の流出は企業への信頼を大きく失墜させます。

代表的な事例として挙げられるのは、2014年に起こった、通信教育の最大手・ベネッセコーポレーションの顧客情報流出事件です。

この事件は、ベネッセのグループ企業に勤務していた派遣社員が外部に顧客データを持ち出し、名簿業者に売却したというものです。ベネッセも被害者ではありますが、本事件の被害者に対しての補償などで特別損失が約260億円に上るなど、経営に大きな影響を受けました。顧客情報を管理する体制の不備が招いた事件といえるでしょう。

 

粉飾決算(不正会計)

企業の巨額の不正会計(粉飾決算)も後を絶ちません。

主力事業の赤字による債務超過に端を発した、カネボウの粉飾決算は額にして約2150億円。かつては繊維産業を中心に隆盛を極めた同社も経営破綻寸前となり、2007年に解散に追い込まれました。

また、2015年には大手電機メーカー・東芝において巨額の不正会計(粉飾決算)が発覚しました。その額は合計で約2,306億円。後に経営危機に陥り、大規模な事業の再構築を行う結果となりました。

外部株主から信頼を得るため、また金融機関に対しての資金繰り対策など、粉飾決算が行われる理由はさまざまですが、結果として大きな代償を支払うことになります。倒産に追い込まれるケースも少なくないことを肝に銘じておきましょう。

 

コンプライアンスの遵守することでのメリットデメリット

それでは、ここでコンプライアンスのメリットとデメリットを考えてみましょう。法令を遵守することにデメリットなど存在するのか、と思うかもしれませんが、必要以上にコンプライアンスを意識してしまうと、思わぬ悪影響を招くことがあります。

 

コンプライアンスのメリット

企業がコンプライアンスを徹底する最大のメリットは、社会的信用を得られることです。企業としての理念や姿勢の表明は、周囲からの信頼を得ることに繋がります。その結果、長期的には企業の成長につながります。

また、従業員に対して規則やルールを提示することで意識の向上につながり、不正行為を未然に防ぐことも可能になります。

 

コンプライアンスのデメリット

コンプライアンスそのもののデメリットではありませんが、コンプライアンス違反で発生するリスクへの対応を見誤ると、企業活動に影響を与えてしまいます。

起こりうるリスクに対し、その高低を見極めたうえで適切な措置を行いましょう。

また、社内の規則やルールを厳格にし過ぎた場合、社内のコミュニケーションの萎縮を招くこともあります。報告や相談をしづらくなり、かえって不正が起こりやすくなることも考えられますので、適切なコミュニケーションを阻害しないような規則やルールの制定が必要です。

 

コンプライアンス遵守推進施策とは

最後に、コンプライアンスのために会社が従業員に対してできることを4点紹介します。コンプライアンスへの取り組みは従業員全員に浸透させることが大切ですので、理解を深め適切な施策を実行しましょう。

 

コンプライアンスマニュアルの作成

コンプライアンスに取り組む自社方針や業務上従業員が守るべきルール、コンプライアンス違反が発生した際の対応や改善策などを盛り込んだ「コンプライアンスマニュアル」を作成しましょう。

当然、マニュアルを作成して終わりではなく、従業員全員に周知することが大切です。

 

コンプライアンス相談窓口を設ける

コンプライアンス違反が発生した際に、迅速に適切な対応が行えるよう、コンプライアンス相談窓口を設けます。従業員が相談しやすいような環境づくりも同時に行いましょう。言うまでもなく、従業員からの相談に対しては真摯に対応しなければなりません。

 

コンプライアンスに関する研修を行う

従業員にコンプライアンスへの意識を高めてもらうために、コンプライアンスに関する研修を行いましょう。優先度が高いのは、「顧客情報の管理を含む情報セキュリティ」や「ハラスメント」に関する研修。教材は外部からも調達可能ですが、自社の業種等に合わせた独自の教材も合わせて準備することが望ましいです。

 

内部監査の実施

コンプライアンスマニュアルの作成、コンプライアンス相談窓口の設置、コンプライアンス研修の実施だけでは十分とはいえません。従業員が不正やルール違反をしていないかをチェックするため、内部監査の実施が必要です。定期的に内部監査を行うことで、従業員にコンプライアンスが浸透しているかを確認できます。

 

コンプライアンスを社内に正しく浸透させよう

現代の企業経営において、コンプライアンスは欠かせないものといえるでしょう。企業としてコンプライアンスに適切に取り組むことで、周囲からの社会的信用を得られ、従業員の意識も向上します。人事担当者として、コンプライアンスについて正しく理解し、社内で積極的に推進していきましょう。

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