CANTERA NOTE

ダイバーシティとホモソーシャルと組織カルチャー

ダイバーシティとホモソーシャルと組織カルチャー

こんにちは。CANTERA ACADEMY4期生の平山です。

先日、ダイバーシティ&インクルージョンやアンコンシャス・バイアスについて改めて勉強する機会があり、その時に感じたモヤモヤした課題感を忘れないために綴らせていただきます。

 

今さらながら、改めてダイバーシティの定義を考えてみる

HR領域におけるダイバーシティというと、まずは女性活躍からはじまり、障がい者雇用、多国籍(人種/宗教)と続き、ここ数年で高齢者雇用、LGBTQという流れで取り組みの範囲が広がってきている印象を受けます。いずれの問題も企業の社会的責任として、また貴重な人材確保に必要な取り組みとして、皆さんの会社でも向き合われていることでしょう。

私自身も、仕事としてダイバーシティを考えたのは女性活躍推進プロジェクトの事務局を担当したときです。その後に障がい者雇用やLGBTQというテーマについても関わりました。

以前はこういったダイバーシティの定義に対する違和感はなかったのですが、複数の会社やコミュニティで多種多様な人々、まさにダイバーシティそのものと触れる中で、違和感が徐々に大きくなってきたのです。

・「女性」というひとくくりでカテゴリーをまとめられるわけがない。女性管理職を増やそうというが、管理職になりたい人もなりたくない人もいる。また、男性にも同じことがいえる。
・「障がい者」といってもできること/できないことも、仕事に対する価値観や姿勢も一人ひとり全く違う。これは健常者でも全く同じことがいえる。
・「LGBTQ」はマイノリティと言われるが、比率は左利きの人と同じ割合で、全然マイノリティではない。周りに知らせていないだけでごく普通の存在で、好きな人の名前をわざわざ周りに言わないのと同じ。カミングアウトする必要も別にない。

つまり、私の違和感は「特定の属性のラベルを貼って、特別な対応をしようとする」ことがダイバーシティの推進を阻害しているのではないかということなのです。

ダイバーシティって一体なんでしょう?

それは、文字通り多様であること。一人ひとりは違うということです。

同じ両親のもとに同じ日に生まれ、同じように育てられ、同じ学校に通う同性の一卵性双生児で、遺伝子情報は全く同じであっても、その二人は違う人であり、それぞれは違う人格なのです。どんな属性であるかを区別する前に、どんな人でも受け入れる姿勢。それがダイバーシティ&インクルージョンの真の意味なのではないでしょうか。

 

ホモソーシャルと組織カルチャーの微妙なバランス

「アンコンシャス・バイアス」がメインテーマだったセミナーに参加したとき、ものすごく大きな課題感を宿題として持ち帰ってしまうことになりました。この宿題とは「その組織特有の価値観が強いほど、アンコンシャス・バイアスは強化されていく」というものです。

昭和50年代生まれで男子校体育会出身の私は、青春時代を完全なる“ホモソーシャル”な空間で過ごしました(ホモソーシャルについて詳しくない方はググってみてください)。20年以上経った今でも当時の友人たちとお酒を飲みに行くと、ホモソーシャルな空気が戻ってきたりします。学生時代の悪友たちとのお酒の席ということもあり、ダイバーシティとは真逆の、モノカルチャーでなかなか危険な発言が横行するのです。一歩引いて冷静に見れば、完全にNGな会話内容なのですが、中にいるとそれが普通になり、その“普通”からずれると「ノリが悪いなー」といった洗礼を受けるわけです。

さすがに男子高校生のような幼さはないものの、「ホモソーシャル」「モノカルチャー」という価値観を考えたとき、それに近い光景を「急成長を目指すスタートアップ」や「勢いのある営業組織」においても感じることがあり、その多くが「カルチャーが強い組織」としてポジティブに捉えられていることに気づいたのです。

・定量的に高い成果を出した社員のみにスポットライトが当てられる文化
(試合に勝てば表彰される。称賛を得られる。スターになれる文化)
・高い成果を出すために、超長時間労働が当たり前になっている文化
(甲子園に出るためには居残り練習も当たりまえ。人が寝ている時に練習してこそ一流という文化)

どちらもやりたい人がやる分にはOKと言われます。ただ、こういった組織では周りもそうせざるを得ない空気を作っていることが多いので、高い成果や成長は実現できても、インクルージョン&ダイバーシティの実現はほぼ不可能になるのです。

私は情報メディアNewsPicksの大ファンで、年会費15,000円を払って毎日のように特集記事やオリジナル動画を閲覧していますが、関係者が自らの番組で「NewsPicksは男子校的でホモソーシャルだ」と揶揄しています。そこに登場される方は急成長スタートアップなど、勢いのある会社の方々が多いのですが、最近はダイバーシティにかなり意識を強めていることが感じられます。

戦略人事担当として、Mission/Vision/Value(以下MVV)の浸透やカルチャーの強さによる一体感は組織の強さの指標であり、コアコンピタンスになるということに疑いはありません。しかしながら、「組織カルチャーの強さ」の定義を間違えてしまうと、インクルージョン&ダイバーシティ、アンコンシャス・バイアスの観点からは一人ひとりの人格を尊重できない、働きにくい組織になってしまうという大きな課題を抱えることになりました。

 

この課題とどう向き合っていくのか

この記事を書いている2021年6月の時点では私の中にはまだ明確な答えはありません。もう少し正確に言うと、「きっとこういうことだろう」という妥当解は頭の中にありますが、本当にそれを実現できるのかという確信はもてないといった感じです。将来の答え合わせのために、頭の中の妥当解を書いて本記事のまとめとします。

■インクルージョン&ダイバーシティとMVV/組織カルチャーの高位両立のために
(1)働き方(時間/場所/職種)は一人ひとりの選択によって決まること
(2)報酬はジョブサイズによって決まり、ジョブは能力/スキル/成果によってアサインされる。それ以外の属性情報は報酬にもジョブにも影響を与えないこと
(3)誰もが安心して意見を言うことができ、それによって不利益を被ることのない心理的安全性が担保されたコミュニティであること
(4)性差や障がいの有無、妊産婦、シニア社員などあらゆる人に配慮されたユニバーサルデザインな職場であること
(5)MVVやPurposeが明示されており、経営トップを含めた組織全体のベクトルが一致していること。ただし、その強度の大小については一人ひとりが違うケースも受容されること
※そもそもValueのなかにインクルージョン&ダイバーシティの考え方が含まれていること
(6)MVVやPurpose実現に向けて、一人ひとりのパフォーマンスを最大化させるための環境/情報/必要な権限/コミュニケーションを担保すること
(7)MVVやPurpose実現のために、適切な人材をバスに乗せ続ける努力をしながら、そのバスはいつでも乗り降りを許容していること

書いてみて気づきましたが、これってほぼGoogleですね(笑)。と言いつつ、一定レベルに事業と組織が成長するまではホモソーシャル&モノカルチャーで突っ走るフェーズが必要なのではないかという考えも未だに捨てられない自分がいます。

一方で、これを覆す新世代の経営者&組織が近い将来にたくさん出てくるのではないかという予感もしています。自分の所属する組織もそうなれるよう、改めて真剣に向き合ってみます。

Written by

Kounosuke_Hirayama
CANTERA ACADEMY4期卒業。 学生時代にインターネット関連の事業起ち上げを経験の後、商社系携帯電話販売代理店にて大手家電量販店の営業を担当。その後、人事部に異動し採用/人材開発/人事評価・昇格制度を担当。社内カレッジ設立/女性活躍推進/M&Aに伴う人事評価制度改定/企業理念の改定・浸透などの全社プロジェクトを推進。9年間で2,000名以上の採用と6,000名以上の研修を担当。 2019年より東証1部上場インターネット関連企業にてグループ全体のHR関連業務を担当。 事業成長と社員のキャリア自律の同時実現をテーマに日々奮闘中。
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