リモートワーク環境における職場の心理的安全性の担保と行動指針設定の大切さを考察

私はさまざまな会社で、人事支援を担当しております。支援するなかで、現在、リモートワークの普及による人と人との関係性の「ほころび」のようなものが、担当先の社内で出てきていると感じます。
ほころびとは「縫い合わせた部分の糸が切れること」を指します。組織では、「人と人を繋ぐ糸(関係性)が切れること」と言い換えられるのではないかと、私は考えます。
万が一、ほころびが生じたとしたら、どうしたら良いでしょうか?
ほころびはなぜ発生するのか
ほころびが生まれる原因は、主に「糸を引きちぎる力が加えられた」からと言えるでしょう。
私が人事支援を担当する会社では、リモートワークが導入されたことで、人と人との結びつきが弱まり、仕事に対する社員の不安が大きくなった可能性があるように感じられます。
リモートワークで不安が生じるのは、「画面越しの相手が、何を考えているのかわからない」ことが原因と考えます。
この不安を言葉にできないまま、取引相手や自分の所属する会社との心の距離が離れてしまうことが、人間関係の糸を引きちぎる力のひとつとなっているのかもしれません。
社員それぞれが不安を感じることを自然と捉え、その不安を解消する手立てを構築していくことが望ましいのではないでしょうか。
そこで私は、リモートワーク環境における「社員の心理的安全性を担保すること」、「社員が最大限の成果を発揮する行動指針設定の大切さ」の2つを、社内でより意識していくことが重要だと考えます。
心理的安全性の担保とは何なのか
『恐れのない組織-「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』(エイミー・C・エドモンドソン 英治出版)によると、心理的安全性とは「誰もが気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる。仕返しなどといった不安なしに懸念や間違いを話すことができ、恥をかくことも無視されることも非難されることもないと確信できる文化」と説明されています 。
この要件を担保していると自信を持っていえる組織はなかなかないでしょう。なぜなら「誰もが」という主語があるからです。組織の全メンバーが等しくその状態である必要があるからです。
この心理的安全性が担保されないことも、糸を引きちぎる力の一つとなるのではないでしょうか。
誰もが気兼ねなく意見を述べることができる組織を目指すことは困難ですが、ぜひとも成し遂げたいものです。
具体的な行動指針を定められているか
多くの組織は「バリュー」や、「行動指針」を定めていると思います。ビジョンやミッションを達成するため、それぞれの組織で素晴らしい指針が定められています。
ただし、現状の行動指針がリモートワーク環境には適さないものになっているかもしれません。
リモートワーク導入前ならば、自分自身のとるべきアクションが行動指針に沿っているか、隣の席にいる上司にその場で相談することも容易でした。
しかし、リモートワーク環境であると、それは簡単には叶いません。アクションをするにあたって、アクションの背景からテキストで説明する必要があり、その巧拙によりアクション内容の質が大きく変わってしまう可能性もあるかもしれません。
リモートワーク環境に合った具体的な行動指針でないと、それもまた糸を引きちぎる力のひとつともなり得ます 。
テキストでの説明能力が低いのが悪い、と断じることは容易です。しかし、その意見が最上のものであるかは議論の余地が多分にあるでしょう。
それぞれのメンバーの意思決定を助ける、また業務規定とは異なる具体的な行動指針を定める必要があるのではないでしょうか。
今回大きく3つの問いに分けてお伝えいたしました。
リモートワークが定着し、(社内に少しずつ人と人との「ほころび」を感じている方に、など)じわじわと組織の健康状態が悪化しているのではないかと感じる方に、本記事が解決の起点となりましたら幸いです。
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