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理想の企業づくりは「ビジョンの普段使い」から

理想の企業づくりは「ビジョンの普段使い」から

現実の課題

しかし現実には、個々のチーム成果を積み重ねても「ありたい姿」に届かないことが往々にしてある。そもそも、個々のチームで行っている活動が、ビジョンからずれてしまっていることも珍しくはない。
すると、ビジョンはそんなに重要なのか? あってもなくても、結果は変わらないのではないか、という疑問も生じるだろう。

ありたい姿の影響度

確かに日常業務が決まっていたら、ビジョンの有無でそれほど行動は変わらないかもしれない。しかし、「ありたい姿」を本気で実現するには、ビジョンが日常行動まで影響力を持っているかどうかが、実は大きく左右してくる。
 
あるスポーツ監督が「世界大会でベスト4に入る」というビジョンを掲げたときに、日頃から「その練習でベスト4にいけるのか」「その食事でベスト4にいけるのか」と問い続けたと聞く。うっとうしく思うメンバーもいたかもしれないが、選手同士でも「その~でベスト4いけるか」が冗談半分、本気半分で日常的に使われたそうである。
 
すると、何気ない行動をとるときにも、「これでベスト4いけるだろうか」と自問自動するクセがつくようになる。これが「ビジョンの普段づかい」である。
ベスト4にいくことを意識してどれだけ日常から積み重ねていけるか。これは企業でも同じである。ビジョンを浸透させたいので「毎朝の朝礼で唱和する」という企業もあるが、それよりもビジョンを意識した日常行動が取られている組織ほど、ビジョン実現の可能性を高く持っているといえるだろう。

さらに、ビジョンをどれだけイメージすることができるか、自分事で捉えることができるかが、ビジョンの普段づかいを支えるうえで必要になる。スポーツ選手の場合は、上位を目指すことが直接自分事になりやすいが、企業の場合、経営ビジョンと個々人の仕事の間に距離がある場合もある。

ビジョンの「普段づかい」

しかし、実は日常的にビジョンの普段づかいの機会は転がっている。たとえば自社紹介をする場面。名刺交換などの際に、簡単に自社紹介をすることがある。製品やサービスの紹介になりがちだが、他社との差別点を強調するときに、「我が社はこういう思いで創業しました」「我が社のサービスを使ってこういう世界が広がることを目指しています」などと説明することはないだろうか。
 
ビジョン・ミッション、あるいはそれを形作ってきた会社の歴史がそこで語られることが多い。これが実は自分の仕事と会社のビジョンをつなげるよい機会となっている。それに気づき、来客があると必ず現場を案内し、その説明を持ち場の社員にさせているという会社もある。
 
外部の人に対し、自分の言葉で会社を語る機会があるだけで、自身の仕事と会社のビジョンを交差させる機会がつくられるのである。

本来ビジョンは、わくわくするものであり、イメージがありありと喚起されるものである。賛同するからこそ、自分の仕事を通じてそこに貢献したいと思う。そのエネルギーが、ビジョンを現実化することになる。

ビジョンの普段づかいは、自分の仕事とビジョン実現との距離を近づけられるようになる一つの手段だ。どうやってビジョンの普段づかいをしよう、という議論が始まることが、わくわくする未来をつくる組織となる一歩目といえよう。

Written by

horio
CANTERA責任者 兼 講師 (株)All Personal代表取締役CEO 1973年北海道生まれ。1994年(株)リクルート入社。2004年ソフトバンクBB(株)入社。ソフトバンク通信事業3社を兼任し、営業・技術統括の組織人事責任者に従事。2012年グリー(株)入社。国内の人事戦略、人事制度、福利厚生、人材開発の責任者を歴任。2014年より東京東信用金庫に入庫し地域活性化に従事。2017年6月(株)AllDeal創業。2018年11月、(株)All Personalに社名変更。
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