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経営理念を意識し、成功を続ける組織の構築

経営理念を意識し、成功を続ける組織の構築

企業の存在意義である経営理念について考える

多くの企業の現場では、どのように顧客に商品を届けるか、どのように販売するか、どのように製造するか、どのように調達するか。人事の場においてはどのように人に注目してもらうか、どのように接点をもてばよいか、どのようにコミュニケーションをとっていけばよいか、どのように教育をすればよいか。様々な問いが発生しています。

半年前まで当たり前のように行えていた事が出来ない今、企業のあらゆる面で強制的に変わることを余儀なくされました。各方面で御苦労が絶えないと存じます。

成功を実現し続ける組織をつくる為に人事部は何をすべきか考える際に、経営理念を意識して、その上で自社のどこに課題があるか特定し、あるべき組織とのギャップの大きい課題の解決に取り組み続ける。この考えが大事です。今回はその課題を見つける為に参考となりうる着眼点を紹介し、行動に結びつける際の注意点も述べて参ります。

自社の経営理念を振り返り成功を導く

さてメインテーマにございます「経営理念」。
経営理念とは「企業の存在意義を具体的に言語化した、法人の価値観」といえるのではないでしょうか。

・何の目的で自社は存在しているのか
・自社は顧客に何を提供するのか
・自社は従業員や取引先、株主とどう向き合うのか
・自社はどのような倫理観を持つのか
企業によって様々ですので普遍的な要素を記載いたしました。

普段の組織の中での行動で見落としがちになりそうな「経営理念」を強く意識して業務に取り組むことは、各部門が求められている成長の先にある成功を導くために重要です。以下に着眼点を記載いたします。

経営理念を振り返る

1.経営理念はどんな時代にも活かすことができる価値観になりますでしょうか?
時代に合わせる必要は必ずしもありません。価値観が生まれた背景や想いが重要です。ただし将来含め相応しくない想いの届け方になっていないか、チェックする必要はあるのではないでしょうか。
例えば「我々は顧客に満足していただくよう、何度でも顧客のもとへ通います」という要素が含まれている理念があるとします。何度も通うことで顧客満足を提供できた時代があったとすればそれは過去の事で、世界の人々の価値観が変わった今では高い確率で顧客から嫌悪感を抱かれます。「我々は顧客に満足していただくよう、誰よりも適切且つ明快なコミュニケーションで臨みます」と言ったように適切な表現に訂正し行動することが必要でしょう。

2.経営理念は顧客を具体的に定義できていますでしょうか?
曖昧であったり抽象的になっていることで、経営理念に相応しくない行動やアウトプットを誘発していませんでしょうか。
「顧客像はなんとなくイメージはできるが、ぼんやりしていて具体性に欠ける」状態ではありませんでしょうか。理念を設けた際にイメージしていた顧客像と合致する相手にビジネスを行えていますでしょうか。顧客像が具体的でないと、経営理念に含まれる自社の目的達成を妨げる恐れがあります。

3.経営理念は定義した顧客に具体的な価値を届けられるものでしょうか?定性定量で両面で測定できますでしょうか?
提供している商品やサービスは顧客に具体的な便益を提供していますでしょうか。測定すべきものは適切に測定できていますでしょうか。
具体的な価値を定義していませんと、顧客へ約束(口頭でも書面でも)した価値の提供ができているか自社でチェックすることができません。情報の非対称性を悪用して、もし現場が顧客への提供価値を偽っているとしても、経営理念に則しているか測定機能がなければその発生を防ぐことができません。具体的な社名は列挙いたしませんが、提供価値を偽ったことがきっかけで企業価値を落とした事例を耳にされたことは多いかと存じます。 そうした事態は避けたいものです。

4.経営理念は自社の透明性を担保していますでしょうか?
経営理念に自社の透明性を示すメッセージがあり、企業活動全体に反映されていますでしょうか。またそれを適時把握できますでしょうか。
透明性という言葉そのものはやや抽象的です。具体的には「嘘はつかない」「他者へ提供するデータは多方面から検証し正確である」などアウトプットの質に良い影響を与えることを言語化することが重要です。

5.経営理念は戦略を具体的に制約できていますでしょうか?
経営理念に相応しくない戦略を実行しないように制約をかけられていますでしょうか。様々な事業を取り組む企業は多いかと存じます。その事業は経営理念に則していますでしょうか。
「儲かる」というビジネスチャンスを見つけたから取り組んだ、という理由でスタートした事業も多いかと存じます。顧客から「こういうことできない?」という依頼からスタートしてスケールさせた事業も多いかと存じます。
商品開発からアウトプットまで経営理念に則しているかチェックし、改善できるところがあれば実施すべきでしょう。

6.経営理念は社員の具体的な羅針盤になっていますでしょうか?
会社は社員が安心して業務に邁進できる指針を示していますでしょうか。経営理念に則していない行動を強要されている現場はありませんでしょうか。素晴らしい理念があっても正確に運用されていなければ意味はありません。
もし経営理念に反した行動が行われたのであれば、なぜそういう事態が発生したのでしょうか。発生した事態から根本的な理由まで遡り検証することが大切です。現場の責任だけにして終息させる、蜥蜴のしっぽ切りのようなことだけは避けたいものです。

7.経営理念は社員のやる気(モチベーション)につながっていますでしょうか?定性定量両面で測定できますでしょうか?
社員の自発的な行動を促し、生産性を向上させ、企業価値を上げることにつながっていますでしょうか。やる気が最終的な成果(アウトプット)につながって初めて経営理念の意味があるのではないでしょうか。

8.経営理念は社員に理念に沿った行動を起こさせていますでしょうか?定性定量両面で測定できますでしょうか?
経営理念が社員が取るべき行動の基礎になり、企業のルールとなり、行動が組織の風土を形作り、風土が企業全体の文化を形成し、外部に評価される成果につながっていますでしょうか。一連の流れは常に循環し改善されていますでしょうか。

経営理念が組織の行動に反映されているか問う

清流の「水」も流れを止めればいずれ濁ります。良い文化となるよう常に改善していきたいものです。前項チェック内容の文章には「具体的」「定性定量」という言葉をいくつか使いました。具体的でない場合、仮に組織全体、部門全体、チーム全体、メンバーの誰かが経営理念に則していない行動をとったとしても、罰則規定に明確に抵触していなければそれらの行動を止めることが困難になります。
また罰則に至る水準のものでないとしても、悪しき行動が積み重なることで、組織にとって取り返しのつかない事態を招いてしまう恐れもあります。

企業価値毀損防止のために、経営理念をカードにして社員が持ち歩き、毎朝チームで読み上げたり、経営理念を毎朝朝礼で社員が唱和したりする例もございます。ただしそういった企業でも社員の行動に経営理念が反映されていないケースがあるかもしれません。仕組みは一応できていますが、理念に沿って正しく「運用」ができていないという状態になってはいませんでしょうか。

外部に企業を評価をいただくためにも、正しい社員の行動の指針とするためにも、「制約」をかける意味でも、企業理念は具体的であり測定できうることが重要です。制度も的確に運用されてこそ意味があります。
これまで取り上げてきました問いは人事だけではなく、各現場にも問われるものです。全ての現場に経営理念が浸透しているか人事部が逐一管理監督することは、一定の大きさになった企業では不可能でしょう。

その場合にはアウトプットに至るまでの業務プロセス、それを実行する社員の目標(行動目標も含む)が経営理念に沿っているか、現場での運用のフォローとその評価まで出来るマネジメント機能が人事部には必要ではないでしょうか。

今のご時世ではどうしても外部環境に引っ張られる形で自社の各プロセスを変えがちになります。経営理念に立ち戻ると果たしてそのプロセスは正しいのか、という問いを各現場では忘れてはいないでしょうか。

「ヒト」を対象とする業務の専門部署である人事部が、全部門に経営理念を強く意識してもらうことを主導し、企業が成長をせねばならない時に「何のために、なぜ、どのように成長するか」という問いに対して、各組織が正しく解を出せるようにフォローすることが今重要ではないでしょうか。

自社の経営理念はこのままで良いのだろうか。そのような疑問が頭に浮かぶ可能性もございます。経営理念は企業の存在意義そのもの。そして企業は継続を前提とします。世の中が大きく変わるということは、継続するために自社も変わらねばならない事態なのかもしれません。

その場合は経営理念の見直しを要する可能性もあります。普遍性を持つ原理原則の追求と変化・改革という一見相反するような行動を起こさねばならないのかもしれません。組織全体の行動をマネジメントできる人事部となられることが期待されます。

Written by

Kamikawa
CANTERA ACADEMY6期卒業。 オートリース⇨人材紹介⇨イベント運営⇨人事周りへの商材を経験。ある方に「人事の仕組みを知らずに働くのは、ルールを知らずにスポーツをするに等しい」という話を聞きCANTERAに参加。CANTERANOTEの裏方として少しお手伝い。
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