転職したての若手人事担当の”やってしまった“から学ぶ5つの教訓
やってしまったポイント①
リファラル採用こそ、期待値調整が命
自身がミスマッチとなった結果から得られた教訓です。
コーチングというテーマで知り合った人の紹介で選考を受け、入社した私の頭の中には、「採用と教育に携わる!自分のミッションとも一致しているこの会社で0から“自分がつくるんだ”」と我ながら根拠のない自信と主観的には熱い想いが占めていました。
しかし、入社後に任される業務に“採用”はほぼなく、メインの仕事は営業でした。
たしかに営業も仕事に入ると事前にきいて入社していたけれど、30%ほどと言われていたものが当初85%以上だったのです。
会社としても「長期的には」採用など任せようと期待してくれていたようでしたが、私のイメージは「最初から」であり、また、ある事情から“新卒”採用ではなく“長期インターン”から新卒採用をすることになりました。
前職では正社員ではないにも関わらずある程度の予算や裁量性をもらってインターン生の採用を行えていたので、面接時に提示してもらっていた採用にかける予算は入社後には「0円」になっていることにも納得がいきません。
営業ばかりの日々が過ぎる中で、営業職から当初の想いであった採用・教育担当になるキャリアパスはほぼ見えず、営業目標を達成することがその取っ掛かりになるかもしれない程度の不確かさに苦しい時間が流れました。
今から振り返れば、己のマインドが悪いし、自己理解や努力が明らかに足らなかったと思っています。そのような自分に対して、たくさんの投資をしてくれていたし、様々な学びを与えていただいた皆さんに感謝しています。
が、当時の私には騙されて入らされたとしか思えませんでした。
このようなことが起きた要因と、自分がもし採用側だったらどうすべきだったかをいくつか挙げてみます。
・「”採用担当”を探してるって言ってましたよ」
という入社したばかりの紹介者による言葉を鵜呑みにしていた。
(紹介者は自社の状況認識が浅く、求職者に伝える内容に齟齬が発生しやすい状態)
⇒リファラル採用では、紹介者がどんなことを伝えており、なにを期待して候補者が来てくれているのかを改めて十分に確認すべきです。
紹介者用の簡潔で明瞭なコミュニケーション設計もなく、訓練もしていない紹介者からの紹介は期待値ギャップを引き起こしやすくなります。
・1,2回見かけたことがあるぐらいだった紹介者と求職者の関係性の浅さ
(選考が初めて会社理解の場になってしまい、入社後のグリップとしても機能していない)
⇒ミスマッチを互いの理解不足だと定義すれば、求職者の見極めの場とは別に会社とポジションの説明をする場が必要です。
また、紹介者は入社後に求職者が上司以外で相談できる存在であることが望ましいでしょう。
・選考の場で約束できないことを約束したかのように言ってしまう
⇒特に新卒一括採用でもない限りは、約束できないことこそをはっきりと伝えるほうがミスマッチのリスクは減少します。
・互いの認識がズレていることがわかった後に納得のいくフォローがなかった
⇒フォローは個別の要望をよくきき、いつどうやってどうしたら満たしてあげれるのか真摯に向き合い伝えていくことが求められます。
形式的に飲み会を開いたり、全社の場でその人がやりたくないことで活躍したと称賛するのがその人にとって本当に効果的かどうかやる前に検討したほうがいいと思いました。
などなど、要するに、明確な期待値と実情とのギャップがあることを見抜くことも調整することもできなかったことが最初のしくじりでした。
やってしまったポイント②
自社に本当にふさわしい施策かどうか?
知的好奇心や短期的な利益よりも、将来の確実なベネフィットを考えるべき。
これは運用できないスカウト型長期インターンの募集サービスを導入したことなどが該当します。
会社はそもそも私を採用担当として見ていないため、日中を営業活動に費やした後、残業してまで採用・教育に関する仕事をすることがしづらい状況でした。
逆求人型の採用媒体は通常よりも工数がかかる傾向があります。
私が導入した成果報酬型の逆求人媒体も同様で、結局最後までほとんど運用されることはなく契約等の手間がかかっただけでした。
研修講師の練習がてら、自分でイベントを開いて集客した学生から長期インターンを採用することに集中するほうが明らかに効果的だったのです。
おもしろそう!
(表面上の)課題に効果的!
などの理由だけでの意思決定は余計な混乱をもたらしかねません。
現在では、何らかを外部から導入する際には「6W2H」で考えるようにしています。
毎回多少ニュアンスは変わりますが、
「いつが最適か(when)」、「だれをターゲットに導入するのがよいか(whom)」、「誰が運用すべきか(who)」、「どうやったら効果的に機能するか(how)」、「そのサービス提供母体は信頼可能か(where)」、「どれぐらいのコスト・効果か(how match)」、「なにを目指しているのか(why)」、「なにをどんなプランで選択すべきか(what)」
などをもとに検討することでより本質的な意思決定に近づけています。
「目的地」と「現在地」とそのギャップである「課題」を解決する「方法」それぞれを着実に分析していれば、”Best”ではなくても “Better”な道は選べますし、正解はないので”Bad”になるくらいならそれでいいと思います。
やってしまったポイント③
前職のやり方を引きずる
特にエージェントなど人材系の会社から人事担当になる方は陥りがちかもしれません。
ついに面接に入れるようになった私は、前の新卒紹介会社でやっていたように、”向きつけ”に重きを置いた面接をしました。
その子の志向や性格を分析して可視化し、やってもらうことになる仕事のうち一致する部分や我慢して努力してもらう必要がある部分を説明することに時間を使いすぎて、志望理由を論理的に言えるかなど上司が気にする部分の”見極め”ができていませんでした。
(ちなみに、新卒やインターンに対して「自社である理由」を論理的に回答するよう求めるのは、”しない”か“最終選考など後半でする”ことを一般的にはおススメしたいです。)
その結果、予算0円で私自身が形成した母集団から初めて応募してくれて、新卒入社もしたいと言ってくれていたインターン候補生がお見送りになりました。。。
終業後、ちょっと高めで美味しいラーメン大盛で食べてしまうぐらいにはショックでした。(笑)
下手に得意なことや実績の出せたことがあるとその方法にこだわってしまいがちですが、視野が狭くなるだけです。
今までの方法を活かすのはもちろんのことですが、改めて目的や目標から逆算してみたときに戦略的にふさわしいかどうか、もっと良い方法がありそうならばそのために必要な知識やスキルを積極的に吸収していく姿勢が大事だと学びました。
やってしまったポイント④
自分だけできてもしょうがない
組織が“できる”ようにするのが人事の仕事
③の学生の面接を通した学んだことです。
「すごくいい子だから、この子に成長の機会を提供してあげたい」という想いが先行して、会社側に受け入れられる準備ができているかを上司ほどに分析できていませんでした。
(採用・教育担当であると勝手に思っていたので)自分ならば、この子の面倒を見てwinwinをつくりだせると今までの経験から自信がありました。
しかし、「入ったばかりの君をメンターとしてつけるのは先輩になる他の人の体面もあってできない」と上司に言われたのです。
自分ならできると思うのはただの自己満足に過ぎませんでした。
結局、組織の規模が大きくなってくれば1on1で教えられる人数は限られます。
新人が成長していきやすい制度や仕組み、空気をチーム単位でつくるなど、自分ではなくて現場や他の社員が育成しやすい環境をつくっていくことのほうが、当たり前ですが人事担当としては重要なのだと体感させられました。
やってしまったポイント⑤
新人にとっては、その場を支配する空気が行動を規定する
社内の空気に萎縮していた自分を振りかえっての教訓です。
文体からは伝わらないと思いますが、普段の私は割とお調子者だと思っています。
入社後すぐに全社でのオンラインMTGがあり、挨拶の機会がありました。
事前情報として皆さんが漫画の「キングダム」がお好きだときいていたので、自分の名前と掛けて「この会社の昌平君※になれるようにがんばりたいです!」と冗談交じりに宣ったわけです。
※「キングダム」に出てくる高名な軍師・戦略家
※筆者名:吉田昌平
2回のキングダム診断で2回とも「昌平君」と診断される
あまり面白くないのはわかっています。わかっていますとも。
失笑なり、ツッコミなり誰かしらくれると考えていましたが、しばらくの沈黙と溜息の後に社長さんから一言「君がなれるの?」と返されるのは予想外でした。
そのようななんとなくのズレは続きました。
冗談を言っても基本的に反応がなく、私が話したり書いた一言一言が後からネガティブフィードバックされ、業務の一挙手一投足が常に監視されているような圧迫感がありました。
あとから「ちがう」と言われないように普段はどうゆうふうにやっているのか質問すると溜息と共に教えられ、改善案として提案するものは「良いね」と言ってくれるもののだんだんお説教タイムになるなどすっかり最初のような明るさも活力もなくなっていました。
ネガティブフィードバックが吸収されるためには、関係性があることが前提になります。
オンライン環境に移行しつつある現在のビジネス環境では尚のこと意識すべきです。
新人とのコミュニケーションにおいて、「新人の価値は、ここにないものを提案したり、新しい視点を組織に届けることだ」という一言があるかないか、また実際にしてもらった時のポジティブな対応があるかないかの差はとても大きなものになると思います。
また、自社のMVVと一貫した言動がなされるような仕掛けが必要です。
CANTERAアカデミーで教わったことですが、特にマネジメント層の言葉や行動、自社独特のフレーズなどの“社内方言”は、良い意味でも悪い意味でも組織の価値基準を形成していきます。
この会社の場合は、「人の潜在的な可能性を開発することで社会に貢献していきたい」といったビジョンを面接の場で社長さんから伝えてもらっていました。
それにもかかわらず入社して1週間で「うちの会社にいなくていいんじゃない?」と言われたり、ぼくの特性に合わせたフィードバックではなく、「これがうちのやり方だから従って」といったニュアンスで伝えられたり感じる機会が増えるにつれて違和感が強くなっていきました。
徐々に採用などの業務の割合は増えてきていましたが、会社のカルチャーと自分の信念が一致していないことは明白だったので退職することになりました。
人によって働く理由は異なるのは大前提ですが、ベンチャー企業ならばMVVが重視されているケースは多くなると思います。
会社を成長させていきたいのならば、MVVと一貫した風土や空気をつくっていくことに多大なコストをかけるべきであるのだと身をもって学びました。
これらの経験のおかげで、現職では本当に毎日楽しく働かせていただいていますし、採用や教育といった業務に活かされています。
念のため一応弁護させていただきますが、自分はなんでもすぐにあきらめるような人間ではありませんし、退職させていただいた会社もとても素敵な会社です。その時の能力と価値観などが合わなかっただけだと思っています。
この記事がミスマッチになった時の求職者側の内面の一例として参考になれば幸いですし、採用や組織風土の設計等に少しでもお役に立てば嬉しいです。