CANTERA NOTE

エグゼクティブ向けコーチング支援

エグゼクティブ向けコーチング支援

コーチングの現状

日本では1990年代後半からビジネスの世界にコーチングが導入されたものの、実際にコーチをつけている経営者の方は限定的です。一方、アメリカではフォーチュン500の企業の内、20~40%の企業の経営者がコーチングを導入していると言われています。

日本でもここ数年、「コーチ型リーダーシップ」といった文脈でコーチングが改めて注目を浴びています。でもなぜ企業の経営者にコーチが必要なのでしょうか。経営者は経営のプロのはず。そのプロがなぜ、コーチングを受けるのでしょうか。 

なぜ世界の経営者はコーチをつけるのか

まず、「コーチングって要は何?」と聞かれたら、あなたならどう答えますか?
実は「コーチング」に世界共通の定義はありません。私が所属する一般社団法人トラストコーチングでは「対話を通じて自己実現や目標達成をサポートするコミュニケーションの技術」と定義しています。そしてコーチングをする際、守るべき「唯一のルール」があります。

それは「アドバイスはしない」、ただそれだけです。

ここがスポーツのコーチとコーチングが決定的に異なる点です。スポーツのコーチはそのスポーツに精通している必要があると思いますが、コーチングにおいてはコーチがクライアントの業界のプロである必要はありません。コーチングのプロであれば担当する業界に精通しているかどうかは関係ないのです。何故ならコーチングを提供するコーチは「クライアントの目標達成を最速・最短で達成させるプロ」だからです。

でもそうはいっても多くの経営者の方は経営経験があったり自らと似たような方をコーチにつけたがる傾向があるようです。それはそうですよね、その方が安心しますから。 

ですが経営のプロをコーチにつける場合、それはコーチングというよりアドバイザーとしての役割を果たすことになるのではないでしょうか。人は無意識に相手のためと思ってアドバイスをしたくなる生き物です。似たような経験を持つ人からは意外性のある問いをされることも少なくなる可能性もありますよね。

有名な話があります。世界を代表する企業であるGEに変革をもたらした元CEO/ジャック・ウェルチ氏をご存知でしょうか。私は初めてコーチングを受ける方に毎回この質問をします。「あなたはウェルチさんがどのようなコーチをつけていたと思いますか?」

約8割の方が「経営実績が豊富なプロ経営者」と答えます。ですが実際には27歳の女性がコーチを務めていたそうです(厳密には期間は異なれど複数のコーチが担当していました)。
彼女は経営のプロではありませんでしたが、コーチングのプロでした。だからこそ世界を代表する経営者のコーチを務めることができたのですね!

では、なぜ世界の名だたる経営者達はコーチをつけるのでしょうか。経営のプロなら一見コーチは不要そうです。この疑問に対してビル・ゲイツ氏はこう答えています。
「すべての人にコーチは必要です。私たちには、フィードバックをしてくれる人が必要なのです。私たちは、フィードバックを受けることで、向上するのです。」

ビル・ゲイツ氏、エリック・シュミット氏、マイク・ザッカーバーグ氏、ジャック・ウェルチ氏・・・錚々たるメンバーがコーチをつける理由について共通して言っていたのは「別の視点を持つためだ」ということでした。
アンドロイド開発で有名なロボット研究者である石黒教授もこう言います。
「自分は自分のことを他人ほど知らない」

私たちは誰しも見たいようにしか世界を見ていません。変化の激しい今の時代、身の回りで起きている変化の予兆を見逃さないようにするためには、一度自分がどんなレンズを通して世界を見ているのかを立ち止まって考え、違うレンズで世界見てみる必要があるのかもしれません。これこそ、コーチングの価値ともいえます。

エグゼクティブコーチングとは具体的に何をするのか?

今、企業はビジネスを通じて利益を生み出すだけでは事足りず、環境や人権への配慮がより一層求められています。まさに「三方よし」を実践できなければ十分な資金さえ獲得できない時代になりつつあります。

だからこそ近年見直され始めたのが「倫理観」や「道徳」「哲学」です。経営者は日々答えのない、非常に難易度の高い意思決定をしなければなりません。誰にも相談できず、孤独を感じることがほとんどです。

そんな時に意思決定の判断基準となるのは過去の経験もさることながら、実は「倫理観」が大きなウエイトを占めているのではないでしょうか。

・これをやることで世の中にどのような影響を及ぼすだろうか?
・それは本当に顧客のためになっているのだろうか?
・このキャンペーンの打ち出し方は今の世の中の風潮からずれていないだろうか?

こういった意思決定一つひとつをサポートするパートナーとなるのがコーチであり、エグゼクティブコーチングの役割です。
エグゼクティブコーチングの手法は様々ですが、上記のような「経営者自身」のことについて話すこともある一方、一般的には「経営者と経営陣との関係性」にフォーカスします。

ある程度の規模の会社になればいくらCEOでも一人で会社を動かすことは難しくなります。企業は組織であり、組織は個人の集合体です。よって企業に大きな影響を及ぼす経営者が他の経営陣とどのような関係を構築することで、より早く、確実に目標を達成できるかを考えていきます。

例えば現時点でCEOが他の経営陣とどのような関係を構築しているかを「ステークホルダー分析」という手法を用いて可視化します。その流れは以下の通りです。

①CEOに「目標を達成する上で関係構築が必要となる人」を書き出してもらいます。
②目標達成する上でそれぞれの人との理想な関係性を100とした時、現状の関係がどうかをスコアリングしてもらいます。
③書き出した人の中で特に関係性の改善が必要と思われる人を特定し、目標を達成するためにその人とどのような関係性を構築していくかをコーチングセッションのテーマにします。
④毎月1回、1時間のセッションの中で日々どのようなコミュニケーションを意識するか、そのためには何を行い、何を辞めるか等について問いを通じてCEOに考えてもらいます。

なんだか①〜④を見ると自分でもできるかもなんて思えますよねですが④における問いやフィードバックの質がコーチングの質を大きく左右します。形式的な問いではなく「クライアントの行動を変える」質問ができるかどうかがコーチングの成否を分けます。

①〜④はあくまで一つの事例ですが、実際のエグゼクティブコーチングではクライアントの目標達成を何を持って測るかについても明確化しておきます。例えば半年後に他経営陣からCEOに対する関係性の変化に関するアンケート結果がこう変わったら達成とする、といったイメージです。

コーチはこのようにクライアントとなるエグゼクティブが目標を達成するまで継続的に支援します。「継続的」であることが重要であり、コーチは毎回のセッションの度にクライアントが目標に向かう姿勢や行動がどのように見えているかをフィードバックします。
クライアントが無意識に違う方向に向かってしまう場合もあるからです。それをコーチが「修正」することはありません。あくまで「当初言っていた方向と違う方向に進んでいるように見えます」とクライアントにフィードバックすることを通じて、クライアントが自ら意識や行動を変える、そんなやりとりを繰り返していきます。

まさに常にやるべきことに集中し、やらなくてもいいことを捨てることのお手伝いをするとも言えるかもしれません。
コーチングではクライアントが目標を達成した時、「〇〇コーチがいたから達成できました!」と言われるのではなく「やった! 自分の力で達成できるようになりました!」とコメントされるような、ある意味で空気のようなコーチングが一番美しいとも言われます。

そのためにはさりげない問いやフィードバックができるかどうかが重要になります。「問い」を立てることなんてそんな難しいことじゃないよ!と思いますか?ここで少しコーチングを体感してみましょう。

イメージしやすいようにスポーツの事例を扱います。あなたはコーチだとします。そして、クライアントは球界を代表する大谷翔平選手だと仮定します。

大谷選手は明日、タイトルをかけた非常に重要な試合への登板を控えており、その前夜である今、あなたは大谷選手とコーチングセッションの時間を設けることになりました。
大谷選手はやや緊張している様子です。あなただったら今、大谷選手にどのような質問を投げかけますか?

コーチは自らが聞きたいことを聞くのではありません。大谷選手の目標は明日の試合で良い結果を残して勝つことです。つまり、この目標の達成に少しでも繋がる可能性のある質問であれば何でも構いません。

さて、あなたはどのような質問をしますか? パッと出てきましたか?問いの質をあげることでビジネスの質も高まります。そしてまずは企業に最も大きな影響を及ぼすエグゼクティブが変わるためにコーチングを受けることで、企業全体も変わることができるかもしれません。

あなたもコーチング、受けてみたくなりましたか!?

Written by

CANTERA ACADEMY3期卒業。 新卒で伊藤忠商事に入社。入社後は人事・総務部配属となり、新卒採用・海外人事(駐在員処遇、出向対応、現地生活調査等)に従事。2018/7にHR Tech、データ活用組織を立ち上げ、その後全社研修企画も兼務。2019/7より全社で新設された「第8カンパニー」の人事担当を務める。一般社団法人トラストコーチング認定シニアコーチ。
初心者でも安心。
現役人事が全面サポート

日本初のCHROアカデミー
「CANTERA(カンテラ)」
戦略人事を実現するための知識と
スキルを体系的に学べます。