【完全版】リスクマネジメントとは?管理方法や取り組み例も解説

近年では、グローバル化やテクノロジーの進歩により企業の業務が複雑化し、業務の一部を外部に委託するアウトソーシング化が進んでいます。この流れにより、外注先の業務停止による企業へのリスクが拡大するなど、企業には一層リスクマネジメントを行うことが求められています。今回は「リスクマネジメント」について、管理方法や取り組み例を用いて解説します。
リスクマネジメントとは?
リスクマネジメントとは、企業の経営において想定できるリスクを、組織的に管理(マネジメント)し、損失を回避または最小限に低減するための一連のプロセスのことです。企業経営におけるリスクとは、例えば「情報漏洩」や「システム障害」、「自然災害」などの、企業の経営に大きな影響を与えそうなものを指します。
リスクマネジメントでは、事前にリスクを回避するために何をするのか、そして万が一リスクが生じた場合にどのような補償をするのかという2つの側面から考える必要があります。リスクマネジメントを実施するにあたり、まずは自社のリスクを知り、それをどのように管理していくか定めることから始めます。
リスクマネジメントの主なポイントは、以下の通りです。
■自社のリスクを洗い出す
組織内や組織外で想定されるリスクや、その影響度は企業によってさまざまです。そのため、まずは自社がどのようなリスクを抱えているのかを洗い出して、リスト化してみましょう。自社のリスクを知る方法として、次の方法があります。
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・社内のアンケート調査
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・過去の事故記録を調べる
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・社内でのヒアリング
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・複数人の会議によるワークショップ法など
洗い出しの時点では、どんな小さなリスクでも見逃さず、あらゆるリスクを網羅するように心がけます。
■リスクを分析する
リスクを洗い出してリスト化したあとは、それぞれのリスクがどれくらいの頻度で発生しているのか、自社にとってどれくらい重大な影響を及ぼすのかなど、その性質を理解するために分析をしましょう。リスクの分析をすることで、管理すべきリスクの優先順位がつけやすくなるほか、見逃していたリスクを発見することにもつながります。
■リスクを評価する
膨大な量のリスクを発見できても、それらをすべて同時に管理するのは現実的ではありません。次に、リスクを「影響の大きさ」「発生確率」に基づいて分析し、それを掛け合わせた結果から管理する優先順位をつけていきます。このとき、「リスクマップ」と呼ばれる図表にまとめると、リスクを可視化できて優先度が把握しやすくなります。リスクマップは特に決まったフォーマットはありませんが、横軸に「発生頻度」、縦軸に「影響度」のように表示します(逆でも問題ありません)。
■管理方法を明確化する
管理するリスクが明確になったら、次は具体的な管理方法を決めていきます。リスクの管理方法は一つではないため、あらゆる方法を考えておく必要があります。例えば、リスク管理のための部署を設置し管理する方法のほか、各事業部門が連携して管理する方法など、自社にとってどのような管理方法が適切なのかを明確化しましょう。
リスクマネジメントに対するPDCAサイクル
リスクマネジメントが実施できたら、現在行っているリスクマネジメントがどの程度効果を発揮しているのか、改善点がないかを知り、定期的に見直し続けることも重要です。見直す方法として、多くの企業が採用している「PDCAサイクル」に基づくことができます。
「PDCAサイクル」とは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の頭文字を取った言葉で、一連のサイクルを繰り返し行うことにより、継続的な業務の改善を促す技法です。リスクマネジメントにおいても、新たなリスクを洗い出して計画を立て(Plan)、体制作りや社内への認知を行い(Do)、リスクマネジメントの結果を基に定期的に管理状況や新たなリスクがないかを調べ(Check)、改善点の修正を行う(Action)ことで、リスクマネジメントの質を維持できるようになるでしょう。
リスクマネジメントの取り組み例
リスクマネジメントは、業種によってさまざまな取り組み方があります。ここでは、多くの企業に起こりがちなリスクと、リスクマネジメントの取り組み例をご紹介します
■情報漏洩
社内の情報が社外に漏れてしまうリスクが情報漏洩です。情報漏洩は、社員が顧客情報などの機密情報を含んだUSBメモリを社外に持ち出して紛失したり、メールを誤送信したりすることで、簡単に起こってしまいます。また、社内のほか、社外からのサーバー攻撃などが原因で発生することもあります。
こういったリスクには、
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・社内での情報管理のルールを徹底する
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・セキュリティー対策を万全にする
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・データを暗号化する
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・外部からの操作をロックする仕組みを導入する
などの対策があります。
■自然災害
自身や火災、台風など、突然の自然災害により業務や事業の存続に甚大な影響を及ぼすことも、決して珍しいことではありません。とはいえ、自然災害自体を止めることはできないため、少しでもリスクを軽減するために対策をしておく必要があります。
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・火災や台風などによる被害に合った際、保険金が支払われる保険への加入
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・突然の事故に対して補償金が出る企業総合保険などへの加入
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・自社の建物を免震や耐震構造にする
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・設備の耐震補強といった防災投資、拠点を分散化する
といった方法があります。
■人事
企業規模に関わらず、すべての企業に必要なリスクマネジメントが、人事に対するリスクです。人事には、退職や解雇、パワーハラスメント、残業などの労働的なリスクから、また人材不足や人事制度の機能など、経営的なリスクまで多岐にわたります。
リスク管理の取り組みとしては、「労働法」や「労働基準法」など、労働に関する法律を正しく理解しておくこと、就業規則を見直すことなどがあります。また、人事部などとは別に社員が相談しやすいトラブル専用の「相談窓口」を設置しておくのも有効だと言えます。
リスクマネジメントに関する資格
より質の高いリスクマネジメントを実施するひとつの方法として、リスクマネジメントに関する資格の取得があります。具体的な資格として、まず挙げられるのがプロジェクトのリスク管理に役立つ「PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)」です。PMOの資格を取得することで、プロジェクトや財務のリスクにはどのようなものがあり、リスクの回避方法が理解できます。
また、リスクマネジメントの「リスクコンサルタント」や「リスクマネージャー」に必要なリスクマネジメントに関する基礎知識や応用力が身に付く「RMCA-J®リスクコンサルタント資格」もあります。知識を持ったリスクコンサルタントとして、クライアントに応じた的確なアドバイスなどをすることができます。
経営戦略の立案やコストの削減など、財務管理に関する高度な知識を手に入れたいときには「プロフェッショナルCFO資格」という資格がおすすめ。財務管理の知識を付けることで、財務面のあらゆるリスクから企業を守ることが可能になります。
企業の未来のために適切なリスクマネジメントを
事前にリスクを回避し、損失の最小化ができるリスクマネジメントは、企業の未来に関わる重要な取り組みです。いつでも起こりえるさまざまなリスクの管理方法を理解し、自社に合った適切なリスクマネジメントを実施しましょう。
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