SDGsの意味と取り組みを徹底解説。企業・個人の例や方法も
近年、テレビ番組やニュースで「SDGs(エスディージーズ)」という言葉をよく見聞きするようになりました。
電通が2021年に実施した「第4回SDGsに関する生活者調査」によると、認知率は50%を超え、特に10代を始めとする若年層の認知度の高さが目立ちます。
しかし、言葉は知っていても実際にどのような取り組みを行えばいいのか分からない、とお悩みをお持ちではないでしょうか。今回はSDGsの意味と取り組みを詳しく解説。企業や個人での取り組み例も紹介しますので、ぜひ活動の参考にしてください。
SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは?
2015年9月の国連サミットにおいて、全会一致で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。この文書の中核となる、2030年までに達成すべき「持続可能な開発目標」をSDGsといいます。
SDGsは「持続可能な開発目標=Sustainable Development Goals」の略称。読みは「エス・ディー・ジーズ」です。SDGsは17の大きな目標と、その課題ごとに設定された具体的な169のターゲットで構成されています。
SDGs17の目標
SDGsを構成する17の目標は以下の通りです。
- 1.貧困をなくす
- 2.飢餓をゼロに
- 3.すべての人に健康と福祉を
- 4.質の高い教育をみんなに
- 5.ジェンダー平等を実現しよう
- 6.安全な水とトイレを世界中に
- 7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 8.働きがいも経済成長も
- 9.産業と技術革新の基盤をつくろう
- 10.人や国の不平等をなくそう
- 11.住み続けられるまちづくりを
- 12.つくる責任つかう責任
- 13.気候変動に具体的な対策を
- 14.海の豊かさを守ろう
- 15.陸の豊かさも守ろう
- 16.平和と公正をすべての人に
- 17.パートナーシップで目標を達成しよう
この17の目標は大きく3つの分野に分けることが可能です。
目標1から6は「社会」に関する目標、目標7から12は「経済」に関する目標、そして目標13から15は「環境」に関する目標です。目標16と17は、これらの3分野を包括した目標です。
SDGs、169のターゲット
これら17の目標には、それぞれのターゲットが設定されています。各目標に対し、平均して10個ほどのターゲットが定められており、総計すると169個にのぼります。
例として、17の目標のうち「1. 貧困をなくそう」を見てみましょう。
「1. 貧困をなくそう」には7つのターゲットが設定されており、例えば次のようなターゲットが定められています。
1.1 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
これは2030年までに、世界中で「極度に貧しい」暮らしをしている人をなくすということ。
世界の貧困率は2000年以降減少傾向にありましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で世界の貧困はこの数十年で初めて増加しました。世界銀行では、1日1.9ドル(約200円)未満での生活を強いられる層を「極度の貧困」と定義していますが、世界人口の約9%にあたる7億人以上が極度の貧困状態に置かれています。
また、「1. 貧困をなくそう」には次のようなターゲットも設定されています。
1.a あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。
これは、開発途上国、特に最も開発が遅れている国で、「貧しさ」をなくすための計画や政策を実行していけるよう、いろいろな方法で資金をたくさん集めるということ。
ターゲットの前には数字とアルファベットが記載されていますが、「1-1」のように数字のみで示されるものは、項目ごとの達成目標を、「1-a」のように数字とアルファベットで示されるものは、ターゲットを実現するための方法を示しています。
SDGs、232の指標
この169のターゲットの下に、232の指標があります。
「1. 貧困をなくそう」にあるターゲット「1.2 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、全ての年齢の男性、女性、子供の割合を半減させる。」の指標として挙げられているのは、
1.2.1 各国の貧困ラインを下回って生活している人口の割合(性別、年齢別)
及び
1.2.2 各国の定義に基づき、あらゆる次元で貧困ラインを下回って生活している男性、女性及び子供の割合(全年齢)
です。
169のターゲットの全てに、このように数値で表せる指標が設定されています。
SDGsの企業取り組み具体例
現在、さまざまな企業でSDGsの取り組みが行われています。
貧困や環境問題への取り組みはコストも発生しますが、メリットも多く、SDGsに取り組む企業は年々増加しています。
企業がSDGsに取り組む主なメリットは以下の通りです。
- ・新規事業の開拓などビジネスチャンスにつながる
- ・事業の創出や地域問題の解決など本業を通した地域貢献が可能に
- ・企業のブランディングに寄与し、優秀な人材を採用しやすくなる
- ・投資家や従業員、消費者などステークホルダーから信頼を得られる
代表的なものは上記ですが、他にも多くのメリットがあります。
今後、SDGsへの注目度が高まるにつれ、SDGsへ取り組むメリットはますます増えていくでしょう。
SDGsに取り組んでいる企業の具体的取り組みを紹介します。
佐川急便
宅配事業を手掛ける佐川急便では、社会課題を解決し、持続可能な社会の実現に向けた活動を積極的に展開しています。
「目標8.働きがいも経済成長も」「目標11.住み続けられるまちづくりを」「目標13.気候変動に具体的な対策を」を達成するために、地域のシルバーセンターと連携。高齢者に新たな雇用の場を提供するとともに、地域の見守り強化にも役立っています。また、荷物を自転車や徒歩で配達するため、環境負荷の低減にも大きく寄与しています。
参考:https://www.sagawa-exp.co.jp/csr/SDGs/
ヤクルトグループ
乳酸菌飲料でおなじみのヤクルトグループでは、研究・開発、調達、生産、物流、販売の5つの事業活動でSDGsに取り組んでいます。
「生産」の部門では「目標8.働きがいも経済成長も」「目標12.つくる責任つかう責任」の達成に向け、持続可能な生産に取り組み、生産工場などの適正な雇用を確保しています。
また、「販売」部門では、「目標3.すべての人に健康と福祉を」「目標5.ジェンダー平等を実現しよう」「目標8.働きがいも経済成長も」の実現のため、ヤクルトレディの就業環境の整備や女性の能力向上を図っています。
参考:https://www.yakult.co.jp/csr/basic/sdgs.html
プロレスリング・ヒートアップ
変わったところでは、神奈川県川崎市に本拠を置くプロレス団体「プロレスリング・ヒートアップ」も積極的にSDGsに取り組んでいます。
「目標8.働きがいも経済成長も」「目標10.人や国の不平等をなくそう」実現のため、プロレスリング興行時に興行スタッフとして、障がい者の臨時雇用及び職業体験を実施しています。また「目標3.すべての人に健康と福祉を」「目標11.住み続けられるまちづくりを」達成のため、高齢者介護施設等を定期慰問したり、児童養護施設における無料プロレス興行の開催を行ったりしています。
SDGsの個人取り組み具体例
もちろん、SDGsは個人や家庭で取り組むことも可能です。
比較的手軽にできるのは、募金などの寄付や徒歩や自転車で通勤・通学すること。それぞれ「目標1.貧困をなくす」「目標3.すべての人に健康と福祉を」に対する取り組みです。
近ごろはレジ袋の有料化に伴い、マイバッグを持ち歩く方も増えてきました。ビニール袋を減らすことで「目標12.つくる責任つかう責任」に貢献することが可能です。
また、家事を平等に分担することもSDGsへの取り組みといえるでしょう。家庭内で協力し合い役割分担することは「目標5.ジェンダー平等を実現しよう」につながります。ぜひ生活の中で取り組んでみてください。
日本でSDGsに対する取り組みが重要となる理由
先進国に分類される日本。しかし、厚生労働省が実施した「相対的貧困率等に関する調査分析結果」によると、子どもの6人から7人に1人が貧困だとされています。
また、ジェンダー平等に関しても日本は大きく立ち遅れています。2020年12月に世界経済フォーラムで発表された「ジェンダー・ギャップ指数」によると、153カ国のうち日本は120位。「男女の所得格差」「女性管理職の少なさ」などが原因です。
この結果を踏まえ、日本では積極的にSDGsに対する取り組むことが急務といえるでしょう。
2016年に外務省が策定したSDGs実施指針において、今後の日本が取り組むSDGsに対し8つの優先課題が定められています。
- 1.あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
- 2.健康・長寿の達成
- 3.成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
- 4.持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
- 5.省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会
- 6.生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
- 7.平和と安全・安心社会の実現
- 8.SDGs実施推進の体制と手段
総理大臣、官房長官、外務大臣などで構成されたSDGs推進本部がとりまとめている「SDGsアクションプラン2021」の中で、それぞれの課題に対し具体的な取り組みが記載されています。
SDGsは国際目標
SDGsはすぐに効果が表れるものではありませんが、企業としても意識していくことが重要です。
雇用や人材育成、従業員の評価など、人事担当として取り組める目標もあるので、まずはできるところから実施してみてはいかがでしょうか。