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多くの人事が学ぶ「コーチング」とは何か。私が学んだきっかけといま注目される理由

多くの人事が学ぶ「コーチング」とは何か。私が学んだきっかけといま注目される理由

私とコーチングとの出会い

実は私、社会人になるまであまり人に興味がありませんでした。大学まで体育会野球部に所属していた私は、いかに野球がうまくなるかを常に考えて練習に励んできました。野球はチームスポーツですが、その前にチームに貢献できるスキルやマインドがなければ力を発揮できる場すら得ることができません。そんな想いが強かったせいか、自分にベクトルが向いていることが多かったように思います。

ところが、社会人になって数年後、後輩の指導係になった時にある壁にぶち当たることになったのです。

大学野球部はほぼ全員が一貫して高校まで野球を続けてきた人で構成されています。皆がリーグ戦出場を目指し切磋琢磨し合う仲間であり、チームが目指す方向性や個々人の気持ちやバックグラウンドにも大差ありません。

しかし、社会人になると状況が異なります。同じ会社で働くメンバーであっても、仕事に対するモチベーションや学生時代の過ごし方、価値観も人それぞれでまるっきり違います。

私はその当たり前に気づかず、これまで自分が正しいと感じてきた価値観や成功体験、そして上司にされてきたマネジメントをそのまま後輩に無意識に押し付けていました。結果、後輩は私を恐れるようになり、パフォーマンスも上がりません。私はそこで初めて自分の関わり方に問題があったことに気づいたのです。

どんな関わり方をすれば、後輩が自分の力を発揮できるようになるのか。悩んでいた私に大学時代の親友がこう声をかけてくれました。「のとちゃん、コーチングやってみない?」

そこから私はコミュニケーションの世界にどっぷり入ることになります。

「コーチング」とは何か?

では、コーチングとは何なのでしょうか?

実はコーチングに関する世界共通の明確な定義は存在しません。ただ、一般的にはこのように表現されます。

・対話によって、相手の目標達成や自己実現をより早く、より確実にサポートしていくコミュニケーションの技術

・質問やフィードバックを通じて相手のパフォーマンスを高める技術

親友から声をかけられた時、私の「コーチ」「コーチング」に対するイメージはスポーツのコーチでした。自分より専門性が高くて、経験が豊富で、自分が欲しいアドバイスを的確に提供してくれる心強い存在というイメージです。

しかし、実際にTCSでコーチングを学んだことで私の価値観は180度変わりました。

そもそもコーチングではアドバイスはしません。それ以外にも信頼される話し方や聞き方、自分が無意識に発する言動や振る舞いはどこから来るのか、徹底的に深掘りしていきます。何よりも学びだったことは、コーチングは「誰かに提供するもの」だけではなく、自分のありたい姿を明確にするためにも使えるということでした。いわば「人としてのあり方」を問う学問ともいえます。

例えば、あなたにはいろんな顔がありますよね。社会人でもあり、〇〇会社の社員でもあり、旦那さんや奥さんであり、誰かの彼氏/彼女かもしれません。きっといずれも少しずつ違うあなたがいると思います。では、それぞれの顔において「どうありたいか」、明確になっているでしょうか。

どんな自分でありたいのか、誰とどんな理想的な関係を築きたいのか、イメージが曖昧なままでは適切なコミュニケーションを取ることも難しいものです。つまり、カメラのピントがぼやけているような物事に対して、解像度を上げ、やるべきこと・やめるべきことをクリアにするサポートをするのが「コーチング」だともいえます。

今、なぜコーチングが再注目されるのか

昨今、急激にコーチングセッションを提供するサービスが増えています。この数ヶ月でも新たなコーチングサービスを提供する会社が何社も立ち上がっているのをご存じの方も多いでしょう。

しかし、コーチングが注目されているのは今だけではありません。

実は日本では2000年頃にコーチングブームが到来しています。そのタイミングでコーチングを受けた方も多いのではないでしょうか。一方で、その当時、コーチングを受けたもののあまり効果を感じず、良いイメージをお持ちでない方も一定数いるようです。

ではなぜ今、改めてコーチングが支持されているのでしょうか。

それは間違いなく、市場環境の変化によるものだと考えています。VUCAの時代になり、これからの世の中の変化はますます見通せないものになりました。私たちの働き方や仕事に対する定義も大きく変わり、キャリアは会社が提示するものではなく、自ら作り上げる時代に変わっています。過去の成功体験がそのまま通用することも減り、情報も溢れ、何が正しいのかすらわからない時代になりました。

そんな正解のない今だからこそ、何を続け、何を捨てるのか。いわば、変えるべきでない本当に大切なことと、生き残るために変えるべきものを丁寧に紐解き、明確にすることでブレない意思決定の軸を作り上げることの重要性が増しているのです。このような時代背景があるからこそ、コーチングに注目が集まっているのではないでしょうか。

答えはコーチングを受ける人の中にある

コーチングは、“コーチングを受ける相手の中に答えがあること”を前提としています。

たくさんの本を読んだり、たくさんの人と話したりすることは、ブレない意思決定の軸を確立するための手段であり、最終的には得られた情報や視点を自分なりにどう整理できるかが大切なはず。結局、答えは自分の中にしかないわけで、コーチがあなたの鏡のような存在になって対話を繰り返すことで、あなたが自分自身と丁寧に、深く向き合えるようになるための支援をします。

例えば、誰かと話をしているとき、自分で話している内容に対して自分自身が「あれ、なんか違う気がするな」と感じたことはありませんか。そんなときはコーチをつける良いタイミングかもしれません。

ちなみに、世界の名だたる企業から構成されるフォーチュン500の企業のうち、48%の経営者がコーチをつけた経験があると言われています。

あのビル・ゲイツ氏もこのように言っています。

すべての人にコーチは必要です。私たちはフィードバックしてくれる人が必要です。私たちはフィードバックを受けることで向上するのです。

いきなりコーチをつけるのはハードルが高いと感じる方は、まずは日頃自分が誰に対してどんなコミュニケーションを取っているのか、嬉しいときやイライラしたときは何が自分をそうさせたのか、振り返ることから始めると良いかもしれません。皆さんもコーチングの第一歩を始めてみませんか。

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CANTERA ACADEMY3期卒業。 新卒で伊藤忠商事に入社。入社後は人事・総務部配属となり、新卒採用・海外人事(駐在員処遇、出向対応、現地生活調査等)に従事。2018/7にHR Tech、データ活用組織を立ち上げ、その後全社研修企画も兼務。2019/7より全社で新設された「第8カンパニー」の人事担当を務める。一般社団法人トラストコーチング認定シニアコーチ。
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