リーダーシップとは何か

最終更新日:2020/06/28

Writing by:能登隆太

「リーダーシップのある人材を採用したい」こんな言葉を良く聞きます。リーダーシップの重要性は世界中の誰しもが認識しています。「どうすればリーダーシップを高めることができるのか」この問いは、いつの時代においても議論が尽きない永遠のテーマだとも言えます。

リーダーシップの定義を明確にする

改めて考えてみると、私たちは当たり前のように「リーダーシップ」という言葉を口にしますが、そもそもイメージしているリーダーシップ像は、お互い同じなのでしょうか?「リーダーシップとは何ですか?」と聞かれたら、あなたはどう答えますか?

・自ら課題を発見し、解決まで粘り強く取り組むこと
・部下にビジョンを示し、チームを指揮・統率すること
・周囲を主体的に巻き込み目標を達成すること

その他いろいろな定義があると思います。日頃よく使う言葉だからこそ、定義を明確化し、互いで認識をすり合わせることが重要です。例えば、あなたのイメージしているものは、実はリーダーシップでなくオーナーシップだったりしませんか?言葉そのものは、本質的に重要ではありませんが、何をイメージしているかは、言語化しておかないと認識にずれが生じてしまいます。もしあなたが、人事の立場で「リーダーシップ強化」を謳う研修やトレーニングを実施している場合、自社において強化したいリーダーシップ像は、関係者でしっかり擦り合っていますか? 不安な場合は、定義を明確化するのか、それとも各自にそれぞれのリーダーシップの在り方を明確化してもらうのかを議論するといいかもしれません。

リーダーシップの歴史的変遷

リーダーシップは永久のテーマだと言いました。実は遥か昔からリーダーシップに関する議論は繰り広げられており、時代とともにその在り方は変わってきています。

リーダーシップ特性論:~1940年
リーダーシップ理論の起源となる考え方であり「リーダーシップは生まれながらにして持っている特性である」と捉えていました。よって、先天的に他者より優れた特性をもっている人がリーダーになれると考えられており、後から鍛えることができないとされてきました。一方でリーダーとなる人に必要な特性の判断基準が曖昧であり、測定もできなかったことから、理論の発展には繋がりませんでした。

リーダーシップ行動論:1940年代~1960年
この時代はその人の持つ特性ではなく、優れたリーダーシップを発揮する人はどういった行動を取るのかに着目し、あるべき行動を特定することで、リーダーを育てようという発想に変わりました。時代背景として軍や産業界において多くのリーダーが必要であったことも影響しています。一方、リーダーとしてあるべき行動も結局は状況にとって変わることから、共通の定義を見出すことができませんでした。

リーダーシップ条件適応理論:1960年代~1970年
「リーダーシップ行動論」に限界を感じていた中、新しい理論として台頭したのが「条件適応理論」です。これはリーダーシップはその人の特性や行動パターンによって一律に定義されるものではなく、状況に応じて有効な行動は変わるというものです。これまで特定の特性や行動を定義しようという論調が強かったものの、この理論ではあえて特定はせず、状況によってリーダーシップの発揮の仕方は変わるという考え方をしています。

変革的リーダーシップ理論:1970年代~
ハーバードビジネススクールのジョン・コッター教授が提唱した理論です。同じ年代に「カリスマ的リーダーシップ理論」なるものが台頭していましたが、当該理論がカリスマ性を持った人の人間性に着目していた一方、変革的リーダーシップ理論ではリーダーが示す「ビジョン」の重要性に目を向けています。当時、多くの企業に変革が求められる中、企業の変革をリードするためには中長期的なビジョンを共有し、部下の能力を引き出しながら組織をマネジメントできるようなリーダーシップが求められると考えられていました。

より多様なリーダーシップ理論:1990年代~
おそらく耳にしたことがあるであろう「サーバント・リーダーシップ」や「リーダーシップ・シェアリング」「セキュアベース・リーダーシップ」などなど・・・。様々なリーダーシップ理論が展開され始めました。やはり状況に応じてリーダーシップの在り方は変化し、あるべき行動・姿勢も変わることが証明されつつあるのではないでしょうか。

リーダーシップとマネジメント

リーダーシップとよく対に出されるのがマネジメントです。前出のジョン・コッター教授はリーダーシップを「変化に対処すること」、マネジメントは「複雑な状況に対処すること」と定義しています。

マネージャーは役職ですが、リーダーシップとマネジメントは行動を指すとも言えます。では、それぞれにおいてどのような行動が理想とされるのでしょうか。理想という捉え方とはやや異なりますが、リーダーシップ研究で有名な神戸大学大学院経営学研究科の金井壽宏教授は「できるマネージャーと、すごいリーダーの対比」を表にしています。わかりやすい整理でしたので掲載させていただきます。

(出所) 金井壽宏「リーダーとマネジャー : リーダーシップの持論(素朴理論)と規範の探求」『国民経済雑誌』第177巻第4号, 1998年, p.69, 神戸大学経済経営学会。

リーダーシップはどう強化するか

では、どうすれば私たちはリーダーシップを強化することができるのでしょうか。これまでの歴史的変遷を見れば、リーダーシップに正解がないとわかります。ただ、だからといって我流で良いということではありません。組織が目指す文化やビジネスモデル、組織構成に応じて発揮すべきリーダーシップは変わります。また、自身が優れたリーダーシップと思って行動を起こした結果、周囲からネガティブな反応をされることもあるでしょう。

大切なのは「今の組織を踏まえ、今自分はどのようなリーダーシップを発揮すべきか」を、常に自問し続けることではないでしょうか。そして、「私たちの組織において、あるべき理想的なリーダーシップとはどのようなことを指すのか?」について組織メンバーと共に考え、目線を合わせることも大切かもしれません。それが、結果的に組織の文化創りに繋がっていくはずです。

・どのようなリーダーシップを発揮することが求められているのか?
・理想的なリーダーシップが発揮できている状態を100とすれば今の自分はどれくらいか?
・そのギャップを埋めるためにどのような心掛けや工夫、行動をすべきか。

このような問いを考え、日々実践し続けることで強固なリーダーシップが出来上がるのだと感じます。私がこれまでの人生で、素晴らしいリーダーシップを発揮されていると感じた人の多くは、理屈でなく、泥臭く現場で自分自身と周囲の方々と向き合い、常に様々なチャレンジを繰り返しながらリーダーシップを確立していました。

他者がいるから成り立つリーダーシップという概念。リーダーシップ強化のヒントは、他者との関係性にもあるのかもしれません。

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執筆者

能登隆太

CANTERA ACADEMY3期卒業。

新卒で伊藤忠商事に入社。入社後は人事・総務部配属となり、新卒採用・海外人事(駐在員処遇、出向対応、現地生活調査等)に従事。2018/7にHR Tech、データ活用組織を立ち上げ、その後全社研修企画も兼務。2019/7より全社で新設された「第8カンパニー」の人事担当を務める。

一般社団法人トラストコーチング認定シニアコーチ。

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