CANTERA NOTE

Vol.3

松本淳さんが教える「SNSを活用したライティングスキル向上法」

松本淳さんが教える「SNSを活用したライティングスキル向上法」

アースメディア代表の松本淳さんは、SNSを活用したソーシャルリクルーティング事業も展開されており、SNS上で多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーとしても知られています。松本さんのTwitterやLinkedInをフォローして、日々投稿をチェックしている人事の方も多いのではないでしょうか。

松本さんは「SNSを通じて書く力の重要性を実感した」のだそうです。ご自身の著書『リクルートに会社を売った男が教える仕事で伸びる50のルール』(フォレスト出版)でも、コロナ後の世界で必須となる能力のひとつとして“ライティング能力”を挙げていらっしゃいます。

そこで、連載第3回目となる今回は、松本さんにSNSで必要な書く力や、ライティングスキルを向上させるためのSNS活用術についてうかがいました。

 

SNSで実感した書く力の重要性

——松本さんが、書く力が大事だと思った瞬間を教えてください。

書く力の重要性を実感したのは、2002年くらいですね。起業した頃にSNSが広まり、自分でもGREEを使いはじめてからです。

当時、GREEはいまのFacebookのようなSNSでした。GREEで書いた文章によって拡散度が変わるのが面白くて、「書く力」って大きいなと感じましたね。

また、今のビジネスシーンではメールからチャット文化になってきて、書く力は重要だなって改めて思っています。チャットはメールよりも頻度も量も多いから、人間性が出る。書く力次第で人を動かせるかどうかが変わるのも実感しています。

そもそも日本では文章力がすごく軽視されていて、あまり気にしていない方が多いと思うんです。小中学校の国語で少し文章の書き方を学んで、終わりですよね。それ以来、書き方を練習しない。だからこそ、逆に書き方をきちんと身につければ非常に有利です。

僕もSNSが広まる前は、世間一般の社会人と同じようにあまり書くことを重視していませんでした。でも、SNSを使い始めてから、僕の中でガラッと世界観が変わったんです。

——松本さんにとって、書く力とSNSは切り離せないものなんですね。ご自身は、SNSを通じてどうやって書く力を磨いていったのでしょうか。

メールだと文章の良し悪しが見えないですが、SNSではダイレクトに反応が帰ってきますよね。せっかく書くなら何かしら反応をもらいたいので、いかに魅力的に書くかを毎回凝っていました。Facebookをメインに使っていたピーク時は1日2〜3本くらい投稿していましたね。

僕の場合は、まず投稿してみて、いいね数やコメント数、コメントの内容などでフォロワーさんの反応を見ていました。AパターンとBパターンの投稿をしてみて、Aパターンのほうが反応が良ければ、Aパターンっぽい内容で投稿を続けてみるといった感じでしょうか。

あと、他の人の投稿も参考にしました。SNSは他の投稿のいいね数やコメント数が見えるので、どういう投稿が人気を集めるのかをリサーチしやすいですよね。その人に特別なキャラがなくても、めちゃくちゃうまい文章だったら反応がすごくよかったりする。自分のやっていることも書き方次第で面白くなるんだと思いましたね。仕事でうまくいっているところだけを抽出して書くのではなく、失敗したことも伝え方や書き方次第で多くの反応をもらうことができます。これは相当研究をしましたね。

——たしかにおっしゃるとおりですね。研究の結果、「これは鉄板だ!」と思う投稿パターンは見つかったのでしょうか。

よく下記のマトリックスをつかって説明するのですが、有益性が強く、自己開示された具体的な投稿がバズるということがわかりました。つまり「自分の経験なんだけど、誰かのためにもなるような投稿」ですね。

ただ、SNSを見ていると、誰もが言っているような格言的なことを投稿する人がすごく多い。でも、そういった一般論は多くの人にはなかなか刺さらないんですよね。

 

“誤解されない文章”を目指して、何度も修正する

——SNSに限らず、松本さんが文章を書くときに、特に意識することもうかがいたいです。

僕は100人が読んで100人とも同じように理解できる“誤解されない文章”を目指しています。難しい概念を文章で理解してもらえるように、徹底的に文章を直すんです。

何回も読み直して、ちょっとでも誤解を受けそうなら、句読点の位置を変えたり、漢字をひらがなに変えたり、逆にひらがなが続いて読みづらいと思ったら漢字にしたり。文章が長くなって主語がわかりにくくなったら短い文章に分けるなど、とにかく徹底的に誤解なく伝わるように何度も直しますね。

——文章の内容が誤解されないように心がけようと思った理由があるのでしょうか。

これもSNSがきっかけですね。自分の投稿に対して来たコメントを見たときに「あれ?これ勘違いされているな」ということが幾度もあったんです。

想定通りのコメントが来ていれば問題ないのですが、そうでないときは自分の投稿が誤解を生む書き方になっているという証拠。SNSは直接フィードバックを受けるので、そこで自然とどうしたら誤解されないかを考えて書くようになりましたね。

——誤解を生まないための文章を目指すこと以外にも、文章を書く際に気をつけていらっしゃることはありますか?

文章の「リズム」も重視しています。文章の長短と句読点の位置、漢字の配置からなる“グルーブ感”ですね。文章を読むときのリズムと、文章の見た目のリズムを総合的に考えています。読む心地よさ、といったところでしょうか。

心地よく読めると、内容が本当に頭に入ってくるんです。だから、場合によっては、意味よりもリズムの方を重視することもあります。

文章のリズムがうまい人は、本当にうまい。例えば、村上春樹は独特だけど、独特のグルーブ感があるから気持ちいいですよね。あれを真似するのは難しいですが(笑)

ただ、村上春樹の小説と違って、我々が書く記事やSNSって読み飛ばされるし、そもそも読んでもらえるかもわからない。タイムラインで目に留めてもらわないと意味がないのです。だからこそ、他の人よりも読んでいて気持ちいいと思ってもらえる文章を書くことが大事だと考えています。

——SNSの投稿で特に印象に残ったことはありますか。

直近だと、LinkedInで「ブロックした」と投稿したことですね。

基本的にLinkedInは平和なんですけど、ごく一部、上から目線で発言される方々がいらっしゃるんですよね。みなさんもこの方々の存在に悩んでいて、これはあまりよくないなと思ったので、僕が「ブロックします」と宣言したんです。この投稿に対して「よく言ってくれた」と多くの反響をいただきました。ブロックした方のなかには、その後に僕を批判していた方もいらっしゃったようですが、ブロックしちゃえば僕にはそれが届かないですからね。

SNSの世界では、運営側に対応を求めるだけではなく、ユーザーが自分の意思を表明して自己防衛していく必要があります。僕はフォロワーさんが多い方なので、こういった意思を表明して行動していく使命があると思ったので、こういう投稿をしました。

ただ、逆にフォロワーさんから「上から目線でウザい」と言われたこともありますよ。上から目線にならないように気をつけていたのですが、それでも上から目線だと感じてしまう人もいるんだなという学びになりました。SNS上で共有した自分の経験談を読んで、「マウンティングされている」と感じる人もいるかもしれません。これまで以上に謙虚にならなければと思いましたね。

——人によってとらえ方が異なるので、自分はそんなつもりで投稿していなくても、嫌味だと受け取られることもありますよね。

ただ、ここがSNSで成功するかどうかの境目だと思いますね。

SNS上には、完成形の意見を聞きたい人が実はそれほど多くないんです。ごく一部の有名人であれば別かもしれませんが、何も成し遂げていない一般人が偉ぶって完成形の意見を投稿しちゃうと嫌われがちです。

それよりも発展途上の人が頑張っているストーリーに共感する人のほうが多い。例えば、堀江貴文さんやキングコングの西野さんはSNSで叩かれることもあるけど、いろんなことに挑戦している姿に惹かれている人が多いのだと思います。

僕自身もまだまだここから事業を大きくしていきたいし、発展途上です。だからこそ謙虚でなければならない。この点は皆さんも注意したほうが良いかもしれません。

——上から目線にならないように、SNSの投稿の際に最低限おさえておくべき書き方も教えていただきたいです。

自分のネガティブなことはあまり書かないようにしていますね。課題があっても、最後は前向きになるようなことを書くことにしています。

あと、SNSはとにかくわかりやすく書くことが重要ですよね。無駄に漢字や専門用語は使っちゃダメだと思うし、柔らかい文章で書いたり、三枚目っぽく書いたりして、あえて隙を作るというのも大事。隙がない文章でビシッと書いちゃうと、フォロワーさんは何のコメントもできませんからね。

たくさん投稿していく中で、フォロワーさんの反応を見ていくうちに、どういった書き方が受け入れられるのかがわかってくると思います。

 

ソーシャルリクルーティングで求められる書き方

——松本さんが事業としても展開される「ソーシャルリクルーティング」に関心を持っている人事の方も多いと思います。ソーシャルリクルーティングでは、どういった点を注意して文章を書けばよいのでしょうか。

会社の側面と個人の側面の両方があると思うのですが、僕は半々くらいのバランス感で書くと良いと思いますね。100%会社に寄ってしまうとつまらなくなりますし、100%個人だと会社のことが伝わらなくなってしまいます。

100%会社の側面に寄ってしまうと、文章が本当につまらなくなる。逆に100%個人の側面だと、会社の考えが伝わらなくなる。半分は会社の話だけど、半分は自分の味を出す文章を書ける人が一番成功していると思います。

——確かにそうかもしれません。ただ、会社の方針で「個人の部分は出さないように」と言われることもありますよね。

会社の方針は自分ではどうしようもないですよね。その会社でできることを目いっぱいやってった後、もし転職できる機会があるなら自分の発言ができる会社に移るのも手ですよね。でないと、自分の能力が伸びませんから。

いずれにせよ、こういう会社はこれから先厳しいとも思いますね。SNS上で発言しない会社はないものと同じ状態になっています。公式発表しかしない会社のアカウントよりも、ガンガン発言しているベンチャー企業のアカウントのほうがSNS上では存在感がある。ますますその流れが加速するでしょう。

——となると、SNS上で存在感があるアカウントにますます注目が集まりそうですね。

はい。SNSで影響力のある人事って何人かいますよね。経営者はそういう人材が欲しい。もはや、フォロワー数が多いことがキャリアになる時代です。しかも、個人のTwitterもLinkedInもアカウントは個人の持ち物なので、転職しても自分のものなんですよね。

ある有名な人事が転職したら、転職先の会社が一気に人気になったという話もあります。何千人ものフォロワーがいる人が転職したと聞けば、その会社に注目するのは当然ですからね。だから、SNSはキャリアアップになると思ってやってほしいです。

人事の場合は会社のブランドをうまく使えるのも大きなメリットですよ。例えるなら、出張で会社に航空代を出してもらいながら、マイレージを自分で貯めていく感覚ですね(笑)

 

これからは書く力がキャリアのコアになる時代

——松本さんは人事にとって「書く力」はどういうスキルだとお考えですか。

まずは、コミュニケーションに欠かせないスキルということですね。ただ、これが割と適当になりがちです。「お祈りメール問題」で炎上したのも一例です。就職や転職、社内の人事関連の話題は非常にセンシティブ。だからこそ、人事はよりいっそう相手の立場や感情を気づかってコミュニケーションをとることが求められます。

人事は営業マン以上にコミュニケーション能力が試されると思ったほうが良いかもしれません。丁寧な言葉を尽くして書いたつもりでも、相手にどう伝わるかのほうが重要。文章力を徹底的に磨いたほうが良いですね。

あとは、広報的なスキルとしても書く力は欠かせないでしょう。会社のビジョンなどをあまりにもかっこよく書きすぎると、逆に薄っぺらな文章になることがあります。良いことを書こうとしすぎずに、あえて崩して書いたほうが人間味が出ることもありますよね。

——たしかにおっしゃるとおりですね。ただ「人間味を出す文章を書くことが逆に難しい」と言う人事の声もよく聞きます。

日頃ビジネス文書を書くのに慣れていると、そう思う人も多いでしょうね。ただ、読む人の立場に立って「この文章を読んで面白いと思うのだろうか」ということを意識して書くだけでも、だいぶ人間味が出てくると思います。

人間味が伝わる文章の訓練として、SNSを活用するのもアリかもしれません。SNSなら読み手の反応がわかるし、その反応に合わせて書こうとするから必然的に人間味が出るようになるのではないでしょうか。

——文章を使って伝える力を身につけるために、何をすべきだと思いますか。

とにかく「書く」ですね。アウトプットファーストです。

本にも書きましたけど、インプットって楽なんです。もちろん、文章を読まないといい文章は書けませんが、読んでいるだけでは書けない。英語のリーディングができてもライティングができないというのと同じです。

書く行為は読む行為と使う脳が違うからこそ、とにかく書くことが重要。量を書けば書くほど、人に伝わることを実感できるようになる。そうやって、スキルアップしていくことが結局一番の近道ではないでしょうか。

スキルアップにおすすめなのが「リライト」ですね。過去に投稿した内容を書き換えて再投稿するんです。

半年前の自分のツイートを見ると、下手だなって思うことありませんか。過去と同じネタでも、今の自分のスキルで最大限に書き直すと結構文章が変わる。リライトなら、ネタ探しに時間がかからない分、推敲にとことん時間をかけることもできます。自分のレベルが上がったことも実感できるので、おすすめですね。

——ただ、書く量を増やしてスキルアップしていくことが大事だとわかっていても、日常の業務が忙しくて書く時間に時間を割けないという人事も少なくないと思います。

確かにそうでしょうね。しかし、書く力はこれからキャリアのコアになっていくと思います。

特に、コロナ禍を機にリモートでテキストでのコミュニケーションも増えてきたから、否が応でも書かなければならない。書くことはもはや仕事のひとつだから、やるしかないんですよ。

——キャリアのコアとして必要なスキルだからこそ、たくさん書いて書く力を磨いていきたいですね。松本さん、今回はありがとうございました。

株式会社アースメディア:https://earthmediacorp.com/

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