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オンボーディングの第一歩『カルチャーブック』で伝えたいこと

オンボーディングの第一歩『カルチャーブック』で伝えたいこと

オンボーディングとは

オンボーディングに共通する特徴としては、
「育成プログラムに十分なお金を投資している」
「入社初日前までに必要なものを全て揃えている」
「welcomeの気持ちが伝わる仕掛けがある」
「人事部門だけではなく、配属される現場を巻き込んでいる」
「会社の文化や価値観を伝えている」
「入社後90日間のロードマップ(プログラム)が明確化されている」
などがあります。このオンボーディングという考え方は、会社の経営理念や就業規則、施設案内、自社の商品やサービス紹介などの研修と勘違いされがちですが、それはオリエンテーションです。

「入社初日、就業規則やルールブックを読ませて終わり」なんてことないでしょうか? それではオンボーディングはできていません。
「welcomeパーティーを企画する」
「入社初日に必ず上司が社内にいる」
「名刺やPCがきちんと準備してある」
など、新入社員に「わたしは歓迎されている」と感じてもらえる行為を含んだものが真のオンボーディングです。

オンボーディングが注目されている背景

なぜ、オンボーディングが注目されているかというと、早期離職率の高さや採用コストの高騰、人材不足、また転職市場の活性化による雇用の流動化が挙げられます。

2019年にワシントンDCで開催された、ATD(Association for Talent Development)という世界中から1万3,000人以上の人事担当者が集まる人材開発協会に参加したときの講演によると、

・22%の人が45日以内に辞める
・35%の人が6ヶ月以内に辞める
・87%の人が6ヶ月以内に仕事を続けていけるか確信を持てない
・69%の人がオンボーディングがよければ、3年以上残ろうと感じる
 というデータがあります。

日本で見ると、1年で10%、3年で30%の新卒社員が退職しているのが現状です。この採用難の中、せっかくコストをかけて採用したにも関わらず、入社して早々に退職してしまうのは、会社にとっても個人にとってもデメリットです。
 
ただ、これは今に始まった話ではなく、過去20年間の傾向をみてみると、実はほとんど同じ結果なのです。「最近の若い者は気合が足りない」「気に入らないことがあると、すぐに転職してしまう」というのは間違いで、早期離職は永遠の課題なのです。

また早期離職は、同期に波紋が広がり、離職理由によってはインターネットやSNSで情報が拡散してしまう恐れもあります。結果として採用に悪影響を与え、人材難につながるという負のスパイラルに陥ります。もし、少しでも、このような傾向があるとしたら、いち早く負のスパイラルから抜け出す必要があります。

早期離職の原因を見てみると、
・仕事内容が思ったものと違った
・人間関係がうまくいかなかった
・労働条件がよくなかった
・給料が低かった
・会社の将来に不安を感じた
・評価されなかった
 などの理由が挙げられます。

これらの退職理由は、まず「入社前にわかったこと」と「入社後にわかったこと」に分けられ、加えて、原因が「本人に起因すること」と「会社に起因すること」の4つに分けられます。この、「入社前後の理想と現実のギャップに、衝撃を受けてしまう」という心理現象を、アメリカの心理学者E.C.ヒューズ氏は「リアリティショック」と提唱しています。

このリアリティショックを軽減すること、内定後、少しでも早い段階から本人と会社の様々なギャップをなくしていく、という視点がオンボーディングプログラムを設計する上でとても重要になってきます。

オンボーディングの第一歩『カルチャーブック』で伝えること

オンボーディングの第一歩として大切なのが、会社の“リアル”を内定者に伝えるということです。弊社でも新入社員にアンケートをとったところ、「実際に仕事をしてみないと、わからないことが多い」「イベントが多いと聞いていたが、雰囲気までわからなかった」などの声が多くあがりました。

そこで、2018年から毎年「カルチャーブック」を作成し、会社の“リアル”を伝える取り組みを行っています。

カルチャーブックとは、会社の考え方や文化を伝える冊子です。会社の沿革や商品やサービスを紹介する会社案内やパンフレットはありますが、その会社で、どんな人がどんな価値観をもって働いているかを紹介するものは、なかなかありません。

カルチャーブックを作成する手順としては、まず全社からプロジェクトメンバーを募り、チームを立ち上げます。

そこから「そもそも会社の良さってなんだろう?」「その良さを伝えるためには、どんな言葉や写真がいいか」などを一つずつ考えていきます。弊社では「フリー素材は一切使わず、モデルは全部社員でやる」「アンケート結果はどんな内容もそのまま掲載する」「実際に社員にインタビューした言葉だけを使う」など“リアル”を表現するために徹底的に手作りするという方向性が決まりました。撮影もカメラ好きな社員に依頼し、印刷以外の全工程を全て社員の力だけで行いました。

そして、今年は「ACCS ONBOARDING 2020」というタイトルのカルチャーブックが完成しました。会社として「オンボーディングを大切にしよう」「オンボーディングが一番できている会社になろう」「オンボーディングが当たり前の言葉になる世の中にしよう」という意味を込めています。

このカルチャーブックは内定時にも渡していますし、その後の研修時にも文化を理解するために使っています。

職種や業種など、何をやるかよりも、社員や社風など、どんな価値観を持った誰とやるかが重要です。これをカルチャーフィットといいます。カルチャーフィットされていないと、どんなオンボーディングプログラムを設計しても効果を発揮しません。内定後のリアリティショックをなくし、少しでも早くカルチャーフィットさせる。大切なオンボーディングの第一歩は内定段階から始まっているのです。

Written by

Yuutaro_tsukuda
CANTERA ACADEMY6期卒業。 アウトソーシング事業部部長兼HRコンサルティング事業部部長。 経理や給与のアウトソーシング事業の全体責任者として350社のバックオフィス業務をサポート。 バックオフィス業務の一環で人材育成の情報収集のために、ATDをはじめとしたHRテクノロジーの海外視察を行ってきた。 現在は人材開発プラットフォーム「MotifyHR」の部長を務める。
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